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シンガポール会社向けコンプライアンス

シンガポール会社向けコンプライアンスガイド

特に明記しない限り、本見積書で紹介されるシンガポール会社とは、シンガポール会社法(Companies Act,Chaper 50 of Singapore)に基づき設立される非公開株式会社(private company limited by shares)を指します。

会社はシンガポールで設立された後、シンガポールの「会社法」及び「所得税法(Income Tax Act)」の規定に基づき、シンガポールの住所を会社の登録住所として登録したり、シンガポール居住者1人を会社秘書役として選任したり、年1回の株主総会を開催したり、年次報告書(Annual Return)を提出したり、財務諸表を作成したりしなければなりません。特定の規定に該当する場合、会社は公認会計士を雇い、その年次財務諸表の監査を行う必要があります。また、会社は期限内に内国歳入庁(IRAS)へ法人税申告書やその証明書類(例えば監査済財務諸表)及び年間給与明細書を提出する必要があります。

本稿は、シンガポール会社設立後の各申告・維持責任及び関連費用について6つの節に分けて紹介します。第1、4節は、シンガポール会社法で規定されている申告及び財務報告に関する責任について述べます。第3節は、主にシンガポール所得税法によって定められた申告責任について説明します。第5節は、シンガポールの中央積立基金(CPF)制度及び雇用主の拠出義務について説明します。第6節は、当事務所がシンガポール会社を維持する最低限度の費用を紹介します。本稿の維持費用は概算金額であり、あくまでも参考用です。最終的な費用は、実際の状況に応じて決定されます。

本稿の内容には、シンガポール会社がシンガポール法律に従い遵守すべき全てのコンプライアンス・維持及び申告の責任が含まれません。本稿の内容について何かご不明な点がありましたら、又はより詳細なシンガポール会社の維持事項を知りたがったら、当事務所の専門コンサルタントまでお気軽にお問い合わせください。

本稿の内容には特定の規制事業に必要なライセンス・許可が含まれません。シンガポール会社の事業活動が保険仲介業又は旅行会社業務等の規制事業に該当する場合には、関連するライセンス・許可の別途申請が必要です。詳細について、当事務所の専門コンサルタントまでお気軽にお問い合わせください。

1.
会社法によるコンプライアンス要求

1.1
会社秘書役(Company Secretary)


シンガポール会社法に基づき、全てのシンガポール会社は設立後6ヶ月以内に秘書役を1人選任しなければなりません。通常は、初代の秘書役が会社設立時に委任されます。会社秘書役は取締役・取締役会によって委任されます。その後、秘書役の情報にいかなる変更があった場合(個人情報変更の場合も含む)、会社は変更後14日以内にその旨を会計企業規制庁(ACRA)に通知する必要があります。

シンガポール会社の秘書役に就任する者はシンガポール居住者でなければなりません。シンガポール居住者とは、シンガポール国民、永住権保持者、EP保持者、S Pass保持者またはアントレパス(起業家ビザ)保持者を指します。

会社秘書役の業務は以下の通りです。
(1) 名目的取締役(Nominee Director)名簿及び実質的支配者名簿の作成・保管
(2) 取締役会及び株主総会の議事録・書面決議書の作成及び保管
(3) 会社の各法定記録帳の作成及び保管
(4) ACRAへの通知書及び申告書の提出


1.2
登記住所(Registered Office)


シンガポール会社法の要求により、全てのシンガポール会社は設立された日からシンガポールにおける登記住所を有しなければなりません。登記住所とは、会社までの連絡・通知を受け取り、且つ会社の法定名簿及び法定記録帳を保存する住所です。

登記住所は毎営業日の通常営業時間内に最低5時間運営し、且つ公衆に訪問可能でなければなりません。登記住所がシンガポールにおける物理的な住所でなければならないので、メールアドレスを登記住所とすることができません。


1.3
現地取締役(Local Director)


シンガポール会社法に基づき、全てのシンガポールの非公開株式会社はシンガポール居住者である取締役を最低1名選任しなければなりません。当該現地取締役は以下の要件を満たさなければなりません。
(1) シンガポール国民、永住権保持者、アントレパス(EntrePass)保持者又はEP保持者
(2) 年齢が満18歳
(3) 完全な法的能力を有する
(4) 取締役になる資格を失った者(破産者で復権を得ない者など)ではない


1.4
会社名称と個別企業登録番号の開示


会社名は会社印鑑、および会社又は会社の代表が発行・署名した全てのビジネスレター、勘定書、領収書、官報、出版物、為替手形、約束手形、裏書、小切手、注文書、レシート及び信用状等においてはっきりしたローマ字で明記されなければなりません。

個別企業登録番号(法人登記番号)は会社又は会社の代表が発行・署名した全てのビジネスレター、勘定書、領収書、官報及び出版物などにおいてはっきり明記されなければなりません。


1.5
会社の高級管理職とその情報の変更


取締役、最高経営責任者、秘書役及び監査人等の委任が変更された場合(委任、辞任を含む)、会社は変更する日から14日以内にACRAに通知する必要があります。

さらに、取締役、最高経営責任者、秘書役及び監査人等の個人情報(国籍、パスポート番号、住所等)が変更された場合、会社は変更する日から14日以内にACRAに通知する必要があります。さもなければ、ACRAは会社の違反行為に対して罰金を課します。


1.6
年次株主総会


年次株主総会(Annual General Meeting: AGM)は会社の法定会議であり、年に1回開催しなければなりません。AGMにおいて株主に対して会社の経営状態を報告します。会社はAGMにおいて株主へ年次財務諸表を提出する必要があり、株主は会社の財務諸表及び経営状態について質問することができます。また、株主は会社の重要事項(例えば、取締役の選任または配当金を出すこと)の決定について投票を行うことができます。

シンガポールの非公開有限会社は会計年度末日から6ヶ月以内にAGMを開催しなければなりません。さもなければ、会社及びその全てのオフィサーは会社法に違反したことにより最高5,000シンガポール・ドル(以下、Sドル)の罰金が科せられます。

会社は年次株主総会の開催及び年次報告書(Annual Return)の提出のために、定められた期限内にAGMを開催できなくて、且つ年次財務諸表を作成する時間がさらに必要となる場合に、年次株主総会の延期を申請することができます。


1.7
年次申告書(Annual Return)


シンガポール非公開有限責任会社は会計年度末から7ヶ月以内に年次報告書をACRAに提出しなければなりません。さもなければ、会社及びその高級管理職全員は会社法に違反し、5,000 SGD以下の罰金が課されます。会社の高級管理職は法廷において起訴され、高級管理職を務めることが禁止される可能性があります。

2.
コープパスの登録と維持

コープパス(Singapore Corporate Access、CorpPass)は会社の電子IDであり、政府機関のウェブサイトに登録し、政府機関との取引及び申告に使用されます。例えば、会計企業規制庁のウェブサイトにアクセスして会社の法定書類を提供し、内国歳入庁(IRAS)のウェブサイトにアクセスして会社の法人税を申告します。

規定により、全てのシンガポール会社はコープパスを申請する必要があります。コープパスはシンガポール会社がシンガポール政府に関する手続きを行うために使用できる唯一の認証方法です。

3.
税法によるコンプライアンス要求

3.1
法人所得税


シンガポール納税者は、会計年度末(FYE)から3ヶ月以内に税務機関へ見積課税所得額(ECI)を提出する必要があります。但し、2017課税年度及びその後の年度では、以下の要件に該当する場合は申告が不要です。
(1) 会計年度内の年間収入は500万SGD未満であること。
(2) その会計年度に見積る税がないこと。

税務機関は毎年5月に納税者へ番号付き申告書Cを送付します。納税者は申告書を受け取った後、要求に従い記入し、電子申告又は郵送等で税務機関へ提出します。税務機関は納税者の提出した申告書類を申請し、納税通知書(Notice of Assessment)を納税者に郵送します。納税者は納税通知書を受け取る日から1ヶ月以内に税金を納付します。さもなければ、税務機関は未払い税金に対して罰金を課します。


3.2
物品サービス税(Goods and Service Tax:GST)


(1)
GST事業者登録

物品サービス税(以下「GST」という)はシンガポール現地において物品又はサービスを提供し、又はシンガポールへ商品を輸入する際に発生する税金です。シンガポールで物品・サービスを提供し、且つ年間課税売上高が100万SGDを超える(又は100万SGDを超えると見込まれる)事業者はGST登録をしなければなりません。GST登録を行う義務が発生する日から30日以内にIRASに通知しなければなりません。

物品又はサービスの大部分が輸出される場合、又は免税取引(Zero-rated Supplies)である場合は、GST登録が不要です。

会社はGST課税業者として登録する方が有利だと判断した場合、GSTの登録義務がなくても任意に登録を申請することができます。登録申請が成功するか否かはGST部門監査官(Comptroller of GST)によって決められます。申請が承認された場合、会社はその登録を2年間以上維持する必要があります。

(2)
GSTの申告・納付

一般的に、会社は四半期ごとにGSTを申告しなければなりません。GST部門監査官に毎月又は半年ごとの申告を申請することもできますが、申請が承認されるか否かは監査官によって決められます。

GST登録をしている会社は申告期間の末日までに(即ち、会計期間末から1ヶ月以内に)GSTの差額を納付しなければなりません。例えば、2020年3月(第一四半期)までの会計期間の場合、申告期限は2020年4月30日となります。


3.3
年間給与明細書


従業員を雇っているシンガポール会社は雇用主として毎年3月1日までに、シンガポールで働いている従業員全員のために、フォームIR8A及び添付書類8A、添付書類8B又はフォームIR8S(適用の場合)を作成する必要があります。従業員は上述のフォームに基づいて個人所得税の申告を行います。

従業員を7人以上雇用しているシンガポール会社は、毎年3月1日までにIRASにフォームIR8Aを提出しなければなりません。従業員が7人未満である場合、記入済Form IR8Aを発行することは結構であり、IRASへの提出は不要です。

4.
年次財務諸表及び監査

4.1
財務諸表

シンガポール会社法により、年次株主総会(AGM)前の半年以内に作成された監査済財務諸表を株主全員に渡し、会議で提出する必要があります。一般的に、1つ又は複数の子会社を持っており、シンガポールで設立された会社は連結財務諸表を作成しなければなりません。但し、シンガポール財務報告基準(SFRS)第110号「連結財務諸表」による特定基準に該当する場合、この限りではありません。

財務諸表には以下の書類が含まれています。
(1) 損益計算書
(2) 貸借対照表
(3) 株主資本等変動計算書
(4) キャッシュフロー計算書
(5) 財務諸表注記

シンガポール財務諸表基準第1号により、財務諸表には取締役報告書(Director’s Report)及び会計監査人の監査報告書(Auditor’s Report)が含まれる必要があります。取締役は、財務諸表が会社の財政状態を真実かつ公正で反映され、会社が満期の債務を弁済する能力があると信じる合理的な理由があることを宣言しなければなりません。


4.2
監査人(Auditor)の選任

シンガポール会社法の規定により、シンガポールで設立された全ての有限責任会社は設立する日から3ヶ月以内に監査人(Auditor)を委任し、毎年の財務諸表の監査がシンガポールの公認会計士によって行われなければなりません。但し、会社法第205B(休眠会社)及び205C(小規模非公開会社)に該当して監査が免除される場合、この限りではありません。


4.3
監査の免除

会社は以下の要件に該当する場合に小規模会社とみられ、法定会計監査が免除されます。
(1)  その会計年度内に非公開会社とみられること。
(2)  直近連続2会計年度内に、以下の3つ基準のうちに2つに該当する場合
(i)   各会計年度の年間収入総額は1000万SGDを超えないこと。
(ii)   各会計年度の総資産は1000万SGDを超えないこと。
(iii)  各会計年度の従業員数は50人を超えないこと。

小規模グループの一部(親会社又は子会社)を構成している会社は、以下の要件に該当する場合、会計監査が免除されます。
(1)  その会社が小規模会社としての資格を有すること。
(2)  所属するグループが「小規模グループ」としての資格を有すること。


4.4
未監査の財務諸表(Unaudited Financial Statements)

適格な小規模会社は、監査人を委任し、監査人に年間財務諸表の監査を行わせる必要がありませんが、未監査の財務諸表を作成しなければなりません。未監査の財務諸表の作成は、IRAS及びACRAへの年間納税申告書及び年次申告書の提出要件に該当します。一連の未監査の財務諸表は監査報告書との違いが監査人の監査意見のみが欠けており、基本的には同じです。未監査の財務諸表には説明書類が含まれ、取締役会の報告書及び取締役会の声明が添付されます。上述の報告書は、シンガポール会計基準(SFRS)に基づき作成され、国際財務報告基準(IFRS)に該当します。

5.
中央積立基金の登録・拠出

シンガポールの中央積立基金(Central Provident Fund:CPF)とは、政府、雇用主、従業員が共に支えており、法律より保護されている強制貯蓄制度です。シンガポール会社は従業員を雇用する前に、中央積立基金庁に積立基金を申告・納付するためにシンガポールの中央積立基金庁(CPF Board)に登録を行い、CPF登録番号(CSN)を取得しなければなりません。雇用主は中央積立基金法(CPF Act)に基づき、所定の拠出率でCPFに積み立てるとともに、従業員の月給から拠出金として納付すべき積立基金を控除する必要があります。

雇用主は毎月末に中央積立基金を中央積立基金庁に納付しなければなりません。一般的には、雇用主は14日間の猶予があります。即ち、雇用主は賃金支給月の翌月14日までに拠出金を支払うことができます。

6.
コンプライアンス・コスト

上述の通り、シンガポール会社はACRAで設立されると、シンガポールの会社法及び税法の各規定(例えば会計年度の決定及び監査人の委任等)に従わなければなりません。また、会社は規制される業務を行う場合には、関係監督部門に免許又は許可を申請する必要があります。当社のシンガポールにおける公認会計士事務所は、会計記帳、財務諸表監査、税務申告、給与計算及び支払代行等の全面的なコンプライアンスサービス及び業務サービスを提供しています。シンガポール会社に対するサービスの内容及びその費用は下表をご参照ください。

番号

サービス項目

サービス費用(SGD

基本的な年間維持サービス

1

現地の名目的取締役(備考1

毎年

2,000から

2

会社秘書役

毎年

750

3

登記住所

毎年

400

4

AGM書類の作成及び年次報告書(Annual Return)の提出

毎年

300

5

CorpPassの維持(備考2

毎年

適用外

その他維持サービス(オプション)

6

会計記帳(備考3

毎月

300から

7

法人所得税申告

毎年

1,000

8

GST事業者登録(任意登録)

一括

600

9

GST事業者登録(強制登録)

一括

300

10

GSTの申告(備考4

毎四半期

300

11

年次財務諸表の法定監査(備考5

毎年

2,000から

12

未監査の財務諸表の作成(監査が免除される場合)(備考6

毎年

700から

13

給与サービス(備考7

毎月

1人あたり100

14

Form IR8A(年間給与明細書)の作成・提出

毎年

1人あたり100


備考:
注1
シンガポール会社が休眠会社である場合、名目的取締役サービス費用は年間2,000 SGDです。シンガポール会社の年間売上高が500万SGDを超えない場合、当事務所の名目的取締役サービス費用は年間3,000 SGDです。シンガポール会社の年間売上高が500万SGD以上、1,000万SGD未満である場合、当事務所の名目的取締役サービス費用は毎年4,000 SGDとなります。年間売上高が1,000万SGDを超えた場合、名目的取締役サービス費用は別途相談となります。
注2
当事務所はコープパスの管理者(CropPass Administrator)としてコープパスを管理・維持します。
注3
会計記帳サービス費用は会社の取引回数によって計算されます。詳細は下表をご参照ください。

月間取引回数

会計記帳の月間費用(SGD

1 - 50

300

51 - 100

500

101 - 150

700

151 - 200

900

201 - 250

1,100

251 以上

別途相談


注4
GST申告サービス費用は四半期ごとに300 SGDです(会計記帳も当事務所に委託する場合)。その費用はサービスを提供する前に請求され、支払われます。
注5
当事務所の財務諸表の法定監査サービス費用は、会社の業務性質、経営状況の複雑性及び取引額等によって決定されます。一般的に、財務諸表の監査費用は2,000SGDからです。当事務所は会社の財務諸表を確認した後、より正確な見積もりを提供します。
注6
当事務所の未監査の財務諸表の作成費用は、会社の業務性質及び会計書類の複雑性によって決定されます。
注7
当事務所の給与サービスには具体的に以下の通りです。
(i)   納付すべき中央積立基金及びその他社会保険料の計算
(ii)  従業員に支払うべき給料の手取り額の計算
(iii) 給与明細書の作成・発行
(iv) 中央積立基金庁への中央積立基金の毎月拠出

参考資料:
                                                                                                                               
1. 「シンガポール支社設立パッケージ #SGBO5」
        https://www.kaizencpa.com/jp/Services/info/id/61.html

2. 「シンガポール会社株式譲渡の手続き及び費用」
        https://www.kaizencpa.com/jp/Services/info/id/305.html

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Skype: kaizencpa

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