シンガポールの予算案は、現在及び将来のニーズに合わせて策定された財政計画です。2025年はシンガポール独立60周年を迎えます。ローレンス・ウォン首相兼財務大臣は、2025年2月18日に2025年度予算演説を行いました。本稿では、法人税及び個人所得税の概要について説明します。
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法人税還付と現金給付
企業のキャッシュ・フローを支援するため、2025課税年度において、納付すべき法人税の50%は還付されます。2024年に事業活動をし、1名以上の現地従業員を雇っていた(現地従業員条件に該当する)企業は、法人税還付金として最低2,000シンガポールドル(以下「SGD」)の給付を受けられます。企業は2024年に1名以上の現地従業員(シンガポール国民又は永住者)(取締役兼務株主を除く)に対して中央積立基金(CPF)の拠出を行った場合、現地従業員条件を満たしたものとみなされます。例えば、企業Aは2024年に現地従業員を2名雇い、2025課税年度の納税額は30,000 SGDでした。Aは2,000 SGDの法人税の現金給付に加えて、さらに13,000 SGD(50%×30,000-2,000)の法人税還付額を受け取ります。
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累進給与補助金制度(PWCS)
PWCSは2022年度予算案で導入され、2022年度から2026年度にかけて段階的な給与の引上げに雇用主が適応するための猶予期間を提供するとともに、雇用主が低賃金労働者の賃金を引き上げるよう促すことを目的としています。適用要件は以下の通りです。
(1)
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引上げ前の従業員の平均賃金は3,000 SGDを超えないこと。
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(2)
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引上げ後の従業員の平均賃金は4,000 SGDを超えないこと。
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(3)
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各対象年度の従業員の平均賃金は毎月100 SGD以上が増加すること。
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(4)
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賃金引き上げが持続される場合、対象年度の昇給に対しては2年間にわたり補助金の対象となること。
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市場開拓支援補助金(MRA)の上限額引き上げ措置の延長
市場開拓支援補助金(MRA)は、海外市場での販促活動、事業開発、市場開拓にかかる費用を補助することで、企業の海外新規市場進出を支援するものです。
現行の新規市場1件当たり100,000 SGDの上限額は2025年3月31日に失効予定でしたが、地元中小企業への海外新規市場進出支援を継続するため、引き上げ措置は2026年3月31日まで延長されます。
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国際化スキームにおける二重控除(DTDi)制度の延長
DTDi制度は、企業が適格な市場拡大及び投資開発費用の200%相当額の控除を申請できる制度です。本制度は2025年12月31日に失効予定でしたが、企業の国際化を引き続き支援するため、2030年12月31日まで延長されます。
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企業融資スキーム(EFS)の拡充
企業融資スキームは、シンガポールの企業が成長のあらゆる段階で資金調達をより易く行えるようにするものです。EFSには2つの措置が実施されます。
まず、EFS-貿易融資における融資上限額を500万SGDから1,000万SGDに引き上げます。これにより、特にコスト上昇の環境において、日々成長する企業の貿易融資ニーズに対応し、国際化への取り組みを支援します。
次に、2025年4月1日から2030年3月31日まで、EFS-M&A融資の対象範囲を株式取得のみに限らず、特定資産の取得支援まで拡大します。これにより、無機質の成長機会を追求するシンガポール企業に対し、より柔軟かつ全面的な資金調達支援を提供します。
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合併・買収(M&A)スキームの延長
M&Aスキームにより、シンガポール企業が他社の普通株式を取得する場合、以下の税制優遇措置を申請できます(条件付き)。
(1)
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M&A控除(5年間で償却)は、課税年度ごとに、適格なM&Aにおいて買収価額のうち最大4,000万SGDの25%(即ち1,000万SGD)を控除対象とする。
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(2)
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適格なM&Aに伴う取引費用の200%相当額は控除対象とする(課税年度ごとの控除上限額は10万SGD)。
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本制度は2025年12月31日に失効予定でしたが、M&Aを通じた企業成長支援を継続するため、2030年12月31日まで延長されます。
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株式市場活性化のための優遇税制
シンガポールでの新規上場を促進し、シンガポール上場株式への投資需要を高めるため、政府は以下の3つの優遇税制を導入します。
7.1
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シンガポールで新規上場する企業に対する法人税還付
シンガポールに納税義務を有する法人及び登録事業信託は、上場企業の法人税の10%又は20%還付が申請可能です。具体的に、時価総額が10億SGD以上の企業は課税年度ごとに最大600万SGD、時価総額が10億SGD未満の企業は課税年度ごとに最大300万SGDを上限還付額とします。
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7.2
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シンガポールで上場する新設ファンマネージャー向けの軽減税率
シンガポールのファンドマネージャーは、適格所得に対して軽減税率を申請することができます。
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7.3
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シンガポール上場株式に投資するファンドから生じるファンドマネージャーの適格所得に対する免税
シンガポールのファンドマネージャーは、シンガポール上場株式に投資する適格ファンドから生じる所得について法人税免除を申請することができます。
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7.2及び7.3は、金融セクターインセンティブ・ファンドマネジメント(FSI-FM)の拡充措置です。現行のFSI-FMでは、シンガポールのファンドマネジメントがファンド管理及び投資相談サービスの提供により得る適格所得に対し、10%の軽減税率を適用しています。
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個人所得税還付
政府は、2025課税年度(2024年は対象期間)において、全ての税務上の居住者に対し、納付すべき個人所得税の60%に相当する還付を実施します。還付が主に中間所得層の労働者に恩恵をもたらすために、還付額は納税者1人あたり200 SGDを上限とします。内国歳入庁(IRAS)が自動的に計算し、全ての納税義務者に対して還付を行うため、申請は不要です。