英国のVAT延期会計
英国のVAT延期会計(Postponed VAT Accounting:PVA)により、英国の企業は商品を輸入する際に輸入VATの納付を延期できるようになりました。企業は輸入時に輸入VATを納付する代わりに、VAT申告書にVAT額を申告することができます。
VAT延期会計を導入する目的は、通関手続きを簡素化し、企業のキャッシュフロー管理を支援することです。VAT延期会計により、企業は輸入時に輸入VATを英国歳入関税庁(HMRC)に納付することではなく、VAT申告書にVAT額を申告し、VAT延期会計を通じてキャッシュフローを改善することができます。しかし、企業は輸入時に支払うべき関税を支払う必要がある点が変わりません。
企業は各税関申告でVAT延期会計の利用を確認する必要がありますが、VAT延期会計を申請したり、事前に歳入関税庁にを報告したりする必要がありません。企業が必要なのは、英国の有効なVAT番号及び事業者登録識別(EORI)番号となります。
企業は政府のゲートウェイアカウントを使って、HMRC WebサイトでVAT延期会計明細書を取得できます。その申告書は、VAT申告書に記載される輸入VATを計算するための公式記録です。
全体として、VAT延期会計は、企業が輸入VATを管理する負担を軽減することに大きな役割を果たしています。商品を輸入しているほとんどの英国会社はVAT延期会計を選びます。
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必要要件
誤る申告の場合は罰則が発生するかもしれないため、重要なのは、企業が正確な手続きでVAT延期会計を利用することです。従って、商品を英国に輸入する前に、企業はVAT番号及び事業者登録識別(EORI)番号を申請する必要があります。上述の2つ番号のみは税関申告に使われます。
VAT延期会計は正式な申請手続きがありません。企業は事前に歳入関税庁にを報告したりする必要がありませんが、各税関申告でVAT延期会計の利用を確認する必要があります。
通関業者又は税関代理人(Custom Agents)が税関申告を処理している場合、企業はVAT延期会計を利用するか否かを当該者に伝える必要があります。
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VAT延期会計明細書(PVA Statement)
企業は以下の手続きに従い、HMRCのWebサイトでVAT延期会計明細書を取得できます。
(1)
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政府ゲートウェイアカウントにログインします。
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(2)
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「VAT」をクリックした後、「View your VAT account」をクリックします。
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(3)
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利用可能なオプションのリストから「Postponed VAT accounting」をクリックしてから表示する期間を選択した後、「View statement」をクリックします。
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(4)
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VAT延期会計明細書が画面に表示され、ダウンロード又は印刷することができます。
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VAT延期会計明細書がVAT申告書に記載される輸入VATを計算するために使用されるため、企業は全てのVAT延期会計明細書をタイムリーかつ適切に保存する必要があります。適切に記録しなかったり、正確な輸入VAT額を申請しなかったりする場合、HMRCから罰金が課せられる可能性があります。
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メリット
企業にとっては、VAT延期会計がもたらすメリットが大きいです。通関手続きの簡素化に加えて、輸入時に輸入VATを納付する企業のニーズも減らしました。輸入時に現金で納税する必要がなくなるため、企業の管理負担を軽減し、企業のキャッシュフローを改善することができます。
VAT延期会計は企業のコストを削減することもできます。VAT延期会計を利用しない場合、企業は輸入時に輸入VATを納付する必要があるため、その税額を通関業者又は税関代理人に支払わなければなりません。通関業者又は税関代理人は企業の代わりにVATをHMRCに納付しますが、納付代行についてサービス料金を企業に請求します。すなわち、企業側にはコストが別途発生しました。VAT延期会計を利用する場合、企業は輸入VATを自社で申告して会計処理することで、上述の別途発生のコストを回避できます。
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デメリット
しかし、VAT延期会計にもデメリットがあります。企業は、正確な手続きで虚偽のない申告書をHMRCに提出することを確保しなければなりません。虚偽申告の場合には罰則及び追加費用が発生する可能性があります。
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