パナマ民間財団パート1 ― パナマ民間財団の基本情報について
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パナマ民間財団の歴史
パナマ民間財団(Panama Private Foundation)は、信託と会社の間における法人ですが、信託でも会社でもありません。財団は、個人又はグループ(法人等)の法的実体ではなく、所有者(株主、参加者又はパートナー)のない法人であるため、アングロ・サクソン法での既知の法人とは異なります。伝統的に、その財団の唯一の目的は、個人グループに利益をもたらすことです。
「財団」の概念は、キリスト教の影響下のローマ帝国で始まりました。例えば、カトリック教会は神聖な財団と見なされており、教会内の各所属組織はその財産に対して法律上の管理権を有します。財団は、最初に特定の個人又は家庭のニーズに応じるためでなく、共同体のニーズに応えるために設立されました。数世紀後、「財団」と呼ばれる法的実体は引き続き存在し、特定の個人又は家庭のニーズを満たすために世界中でよく利用されています。
「民間財団」の概念は、1926年1月20日にリヒテンシュタイン公国が公布された「人及び会社法(Personen und Gesellschaft Recht)」から始めました。当該法律は、「家族財団(Family Foundation)」及び「混合財団(Mixed Foundation)」を導入しました。家族財団は1つ又は複数の家族の利益を目的とし、混合財団は家族の利益だけでなく、その他の個人や機関の利益を目的とします。
歴史上、ヨーロッパの裕福な家族は、家族の受益者への資産を安全的に相続するために、リヒテンシュタイン公国(戦争等による中立国)に家族財団を設立してきました。今日、リヒテンシュタイン財団の設立費用は25,000米ドルにも達し、年間維持費は10,000米ドルにも達します。
パナマ民間財団は、リヒテンシュタイン、スイス、ルクセンブルグ公国の3つの異なる国の民間財団に基づき発展されてきた法的実体です。パナマ政府は、世界中の人々のためにより近代的で経済的で弾力性のある遺産計画ツールを創造することを目的として、パナマ民間財団を導入しました。パナマ民間財団の資産は、その創設者・保護者・理事会又は受益者の個人財産から分離されており、独立した法人格を有します。
パナマ民間財団は、世界中の遺産計画において、財団の保護者・創設者・受益者にプライバシー・匿名性・保護を提供できるという明らかな利点があります。パナマ民間財団は、世界中のニーズに対応する最も経済的で、匿名性・弾力性・プライバシーのある財産計画ツールであり、会社・信託・銀行口座・投資勘定・不動産又はその他の資産等を保有するために利用できます。
パナマ民間財団は、登記所に登録された後に設立され、公的機関の承認が必要ありません。パナマ民間財団は、1995年6月12日の法律第25号によって規制されています。
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民間財団の定義
民間財団は、1つ又は複数の自然人又は法人(創設者)が「行動憲章(Foundation Charter)」と呼ばれる文書をパナマ公共登記所(Public Registry of Panama)に登録することによって設立されます。行動憲章により、全ての創設者は10,000以上米ドルを寄付し(後のその他の寄付で金額が増える可能性がある)、財団の理事会は保護者の監督下で管理し、1つ又は複数の受益者の利益を保護します。
寄付の責任は時間の制限がありません。寄付は金銭又は現物で行うことができます。寄付について、法律の条項による開示の要求、又は払込に関する正式の通知もありません。
行動憲章がパナマ公共登記所に登録されることは、民間財団が設立されると見なされ、それ以外の法的承認がいりません。
民間財団は会社と信託の組み合わせです。一般的に、財団は会社と同じく、公共登記所に登録・設立され、その財産が創設者の財産から独立し、財産の所有権の匿名化や金銭的利益の取得を目的とします。また、民間財団も行政機関と似ています。財団と会社の違いについて、財団は所有者を有しておらず、株式又はその他の参加権を発行しません。財団は遺嘱により設立することができ、営利目的でない場合もあります。
財団は信託との類似点もあります。(1)特定の手続きにより設立された法的機関です。(2)創設者の財産の一部は財団に譲渡、贈与又は寄付されます。(3)遺嘱により生きるとき又は亡くなった直前に設立できます。(4)寄付者の近親者による資産の管理、保存、実行又は投資、及び匿名性や金銭的利益を目的として設立されます。法人格を有し、受託者の代わりに、取締役会と受託者の職能を有する理事会を設置する財団は、自己資産の所有者について、信託と異なります。また、財団は公共登記所に登録され、毎年300米ドルの年間維持費を納付する必要があります。パナマ民間財団の特徴を理解するために、上記の相違点が重要です。本稿は以下の章でより詳細に紹介します。
1995年6月12日第25号法律は、民間財団の設立及び運営の方法を詳細に規制しています。それに加えて、1995年8月8日第417号行政法規は、公共登記所における民間財団の設立、民間財団の登録・登録変更・登録抹消を規制しています。
民間財団は、創設者が作成した条項により公共登記所に登録されないことを選択することができ、絶対的な匿名性を維持します。条項には受益者の指定及び財団の財産の分配方法が含まれています。
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パナマ民間財団の利用
パナマ民間財団は、1つもしくは複数の個人、家庭又は特定の社会的な目的の利益のために設立されることができます。
通常、パナマ民間財団は外国会社の所有権を保有・維持するために使用されます。イギリス・カナダ・アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・フランス・イタリア・スペイン等の一部の重税国家にCFC税制があるため、市民は税務機関に関連する報告書を提出し、外国会社の株主であることを示す必要があります。従って、当該国の投資者は、直接に外国会社を保有することが望んでいません。
投資者は、パナマで民間財団を設立することにより、自己名義又は無記名株式の代わりに財団が持株会社として外国会社の株式を保有し、CFC税制の申告要件を回避します。従って、財団を会社の株主として使用する利点は、自己名義又は無記名株式から会社の所有権を所有者のない外国法人に移転することであり、匿名受益者も必要ありません。その場合には、会社の株式が財団に発行するため、会社の所有権が投資者にありません。
多数の場合、会社口座又は投資勘定を開設する際に、金融機関は投資者に会社の受益者を開示することを要します。財団を持株会社とすることにより、会社の所有者が財団であると宣言することができます。その目的も、所有権を自己名義から匿名性のある外国法人に移転することです。
パナマ財団は所有権に係る利点に加えて、下記の利点もあります。パナマ財団は海外への送金、又は海外からの資金調達に利用できます。場合によっては、目的を達成するためにパナマ財団が利用できます。例えば、一部の人は彼らの資金をパナマ財団に寄付し、財団を通じて彼らの子供、孫、又はその他の者に教育費又は特定の助成金を提供します。一部の政府が「贈与税」の納付・申告を要するため、寄付に係る租税を回避することができます。
一般的に、民間財団は会社のように営利活動を行うことができません。但し、営利活動による利益が財団の目的に使用される場合、営利活動を行うことができます。例えば、投資活動が財団の受益者の利益のための場合、民間財団は定期預金、株式、債券、投資信託、先物、通貨等への投資活動を行うことができます。
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パナマ民間行動憲章の要件
公共登記所に登録されるための憲章には、以下の各項が含まれています。
(1) 財団の名称(名称に「財団」という文字(任意言語)が含まれることが必要)
(2) 住所
(3) 10,000米ドル以上又はその相当値の元入資本/財産(全通貨が可能)
(4) 財産を管理する理事会の構成員の氏名と住所(個人又は法人を問わず)
(5) 財団のパナマでの代理人の氏名と住所(弁護士又は弁護士事務所である必要)
(6) 財団の目的(実行可能、合理的、道徳的、合法的である必要)
(7) 受益者(創設者を含むことが可能)
(8) 行動憲章を変更する権利の留保
(9) 財団の存続期間
(10) 解散の際の財団資産の使用と清算の方法
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名簿、記録と印章
設立代理人は財団のために記録を保管する必要がありません。従って、財団は全ての理事会議事録を保管することが最善です。会議は世界中のどこにでも開催できます。財団法人印章は必要なものではありません。創設者の要求に応じて、弁護士事務所は財団法人印章を提供することができます。
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移転
その他の国・地域の財団はパナマに移転することができ、逆もまた同様です。リヒテンシュタイン、スイス、その他の国・地域に会社を有している者は、会社をパナマ等のより経済的、匿名性や弾力性のあり、且つ安全な国・地域に移転しています。