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シンガポールのGST(消費税)を解説

シンガポールのGST(消費税)を解説

シンガポールの財・サービス税(Goods and Services Tax, GST)とは、消費税とも言われ、中国の増値税又は台湾の営業税と類似し、1994年4月1日にシンガポールに実施されました。シンガポールのGST法はイギリス及びニュージーランドの付加価値税法をモデルにして作られました。シンガポールの内国歳入庁(IRAS)はシンガポール政府の代表として消費税の管理・評価及び徴収を行います。

シンガポールはGSTを導入する目的は、個人所得税及び法人所得税を減らすとともに、安定した課税基盤を保持することです。消費税は間接税の一種であり、消費金額を税額計算の基礎とします。現行の消費税率は7%です。

本稿はシンガポールの消費税について簡単に説明します(GSTの定義、登録、GST登録のメリットとデメリット、GSTの申告及び政府が企業を支援するための関連計画など)。

  1. 財・サービス税(GST)

    GSTとは、その他の国家・地区では付加価値税(VAT)と言われ、シンガポールでの貨物提供、役務提供及び輸入貨物に対して徴収する税金の一種です。GSTは間接税であり、シンガポールでGST登録を行った事業者の販売価格を税額計算の基礎として、現行税率が7%です。

    GST(消費税)は一般消費者に対し徴収する税金なので、事業者のコストに属しません。企業はシンガポールの内国歳入庁(IRAS)に代わって、消費者に対して消費税を受け取ります。

    企業はすでにGST登録を行った場合、提供した貨物及び役務に対する消費税を顧客に徴収してから、IRASに納付する必要があります。例えば、顧客に提供するサービスの料金が100Sドルであれば、顧客から107Sドルを受け取る必要があります(その中で100Sドルはサービス料、7Sドルは消費税)。その後、受け取った消費税を四半期ごとにIRASに申告・納付しなければなりません。

  2. GST登録の要件

    GSTは自己評価が必要な税種です。全ての企業はGST登録が必要かどうかを継続して自己評価する必要があります。GST登録は強制登録と任意登録に分けられます。

    2.1
    強制登録

    以下の条件を満たす企業は、GSTの登録が義務付けられます。

    (1)企業の過去12ヶ月の売上高が100万Sドルを超える(俗称「遡りベース」)。
    (2)企業が営業を始めており、かつ今後12ヶ月以内に企業の売上高が100万Sドルを超えると信じられる合理的な理由がある(俗称「予想ベース」)。

    GST登録する義務を怠ると罰金が科される場合があります。詳細は第9節をご覧ください。

    2.2
    任意登録

    次のいずれかの条件を満たす企業は、GST登録を任意に行うことができます。

    (1)企業の売上高は100万Sドルを超えない。
    (2)企業は主にシンガポール国外で貨物を販売する(範囲外商品及びサービス)。
    (3)企業は主にGST登録義務を免除された金融サービスを提供するとともに、当該サービスが国際サービスとみなされる。

    任意登録のメリットは企業が消費税の還付を申請できます。特に企業が提供する貨物及びサービスは免税対象(輸出又は国際サービス)に該当する場合、GST登録のメリットがより顕著となります。注意すべき点として、一旦任意登録が承認されると、企業は登録事業者の状態を最低2年間維持しなければなりません。すでに休業しており且つGST登録を抹消したとしても、全ての証憑及び記録を最低5年間保存しなければなりません。企業はIRASによるその他の規定に従う必要もあります。

    2.3
    登録免除
      
    企業が提供する商品及びサービスは免税が適用される場合、企業の課税売上高が強制登録の上限金額を超えたとしても、登録免除を申請できます。登録免除を申請することにより、企業がGST登録の関連行政要求を避けられます。企業が提供する商品及びサービスの90%以上が免税対象であり、且つ支払ったGST(Input Tax)が受け取ったGST(Output Tax)を上回る場合、IRASが登録免除の申請を批准します。

    2.4
    登録抹消

    以下の場合においては、GST登録を行った企業は登録抹消を申請することができます。

    (1)企業がすでに営業を停止した。
    (2)企業はすでに全ての業務を他人に譲渡した。
    (3)企業の売上高が100万Sドルを下回る

    登録抹消をする場合、企業は業務終止後30日以内に指定された申請書及び関連補助書類をIRASに対して提出しなければなりません。

  3. GST登録のメリットとデメリット

    上記で述べたとおり、売上高が100万Sドルを超えた企業にはGST登録が義務付けられます。その他の場合、企業はGST登録を任意に決定することができます。登録するかどうかを考慮する際、以下のメリットとデメリットを考えることをお勧めします。

    3.1
    メリット

    (1)
    ほとんどの大企業がGST登録を行いました。従って、GST登録を行った企業は一定の規模を持つとみなされます。

    (2)
    GSTは比較的公平な税制度です。個人事業主又は被雇用者に対し支払う時のみに課税されます。

    (3)
    GSTは消費のみに適用されます。貯蓄と投資は非課税になります。これは節約すること及び生産活動に投資することを奨励できます。

    (4)
    経営コスト削減により、価格が下がります。実際の納税者は最終使用者であり、且つ多段階の信用制度があるので、企業が税コストを負担する必要がありません。
    3.2 デメリット

    (1)
    GST登録の職責がもたらす行政負担を負わなけれなりません。

    (2)
    GSTの複雑性を研究するために、公認会計士に委託する必要があるかもしれません。特定の状況でかなりの費用が発生することがあります。

    (3)
    GST登録しますと価格は7%上がります。GST未登録者である顧客は企業に支払ったGSTを回収できません。そのため、企業としてはGST還付を受けることでコストを下げられますが、顧客としては気に入らないかもしれません。

    (4)
    GSTは低所得者の負担となる可能性があります。特にインフレ率が高い時期に日常必需品は価格が上がるとともに、7%の税金が加算されます。

  4. GSTが適用される商品及びサービス

    GSTは課税対象となる商品及びサービスのみに適用されます。課税対象となる商品及びサービスとは、GST免除となる商品及びサービス以外のシンガポールで生産・販売される商品及びシンガポールで提供されるサービスを指します。課税対象となる商品及びサービスは標準税率(現行税率は7%)またはゼロ税率が適用されます。

    シンガポール現地で販売する貨物及び提供するサービスはほとんど標準税率が適用されます。

    ゼロ税率の商品及びサービスは0%のGSTが適用される商品及びサービスを指します。GST登録事業者は貨物及びサービスを購入する時に支払ったGSTの還付を申請することができます。シンガポールにおいて、輸出される貨物及び提供される国際サービスはゼロ税率の貨物及びサービスに属します。

    免除貨物及びサービスはGSTを納付する必要がありません。免除貨物及びサービスは販売及び賃貸住宅用地と金融サービスの2種類に分けられます。

    ゼロ税率と免税の違いは、免除貨物を生産・提供する企業はGST還付を申請できません。

    範囲外貨物取引にかかわる貨物はGST法の管轄範囲以外にあります。一般的に、当該取引または用品は以下を含みます。

    (1)
    事業全体を譲渡する
    (2)
    私的な取引
    (3)
    三国間貿易(シンガポール国外の国家・地区から別の国家・地区へ販売する)
    (4)
    ゼロ税率の貨物を販売する

  5. GST登録手続き

    記入済みのシンガポールGST登録申請書(GST F1)とその他補助書類をIRASに提出します。共同事業であれば、所定の申請書(GST F3)及び各パートナーの個人情報を追加提出する必要があります。外国会社、グループ及び部門の登録は別の申請書及び登録手続きが適用されます。海外申請者はシンガポールの現地代理人に委任して、申請時に委任状を提出する必要があります。

    GST登録は通常、3週間かかります。登録完了後、申請者はGST登録通知書を受け取ります。 

    通知書には企業のGST番号、申告頻度と申告期限及びその他特別な指示が記載されています。企業はGST申告書を電子申告で提出しなければなりません。

  6. GSTの受け取りと納付

    6.1
    GST登録事業者である会社は、顧客に貨物及びサービスを提供する際、GSTを受け取って、その後に顧客から受け取ったGSTをIRASに納付しなければなりません。
    6.2
    企業は販売価格(税抜き)にGSTを加算して、またはGSTを上乗せした税込み価格で販売します。
    6.3
    GST登録事業者は、顧客に見積もりを出すときに、口頭又は書面で貨物及びサービスの税込み価格をはっきりと説明することが義務付けられます。貨物及びサービスの価格を明示・公表する時に、税込みの価格を明示しなければなりません。税込み価格をはっきりと明示しない行為は犯罪に該当するかもしれない、且つ罰を招くおそれがあります。但し、貨物及びサービスはチップ(例えば、飲食サービス業)にかかわると、明示する価格が税抜きでも可です。
    6.4
    顧客に対して請求書を発行する時、当該顧客がすでにGST登録を行った場合には、顧客がGST還付を申請できるために、企業はタックスインボイス(Tax Invoice)を発行しなければなりません。当該タックスインボイスには商品の価格とGST額が記載される必要があります。当該インボイスは一般的な請求書(領収書)に取って代わることができます。一般的に、企業は貨物又はサービスの提供後30日以内にインボイスを発行しなければなりません。提供する貨物及びサービスはゼロ税率、または免除貨物及びサービスにかかわり、またはGST非登録者である顧客に貨物及びサービスを提供する場合、GSTインボイスを発行する必要がありません。
    6.5
    料金を受け取るときに、企業はタックスインボイス又は簡略されたタックスインボイス(Simplified Tax Invoice)がなければ、顧客に連続した番号の領収書を発行しなければなりません。
    6.6
    企業はGST申告に影響をもたらすあらゆる取引の記録証拠を保存し、かつGST帳簿(各会計年度の受け取ったGSTと支払ったGSTを記録する)を作成・保存しなければなりません。これはGST申告に大きく役立ちます。
    6.7
    企業はインボイスの日付または輸入許可書の日付に基づき、関連会計年度において仕入税額控除を申請する必要があります。

  7. GST申告書

    一般的に、GST登録事業者である企業は四半期ごとにIRASにGST申告書を提出しなければなりません。申告書には会計期間における企業の現地販売総額、輸出総額、GST登録済みの企業から仕入れた商品の総額、支払ったGSTと受け取ったGSTの金額がはっきりと記載される必要があります。現在、GST申告は全面的に電子申告で行わられます。企業はGSTの電子申告を始めたら、次回のGST申告書は申告期限前にオンライン申告システムに自動的に現れます。企業は会計期間終了後の初日以降にGST申告書を提出することができます。IRASが会計期間終了後1ヶ月以内に申告書を受領することを確保する必要があります。当期に納めるべきGSTがなくてもゼロ申告の申告書を提出しなければなりません。申告書を期限後に提出する場合、申告するGST額が納めるべきGST又は還付してもらうGSTにもかかわらず、罰金が科されます。

    企業は会計期間終了後1ヶ月以内にGSTを納付しなければならず、期限後に納付すると罰金が科されます。GSTリファンド(GST REFUNDS)は一般的にIRASが申告書を受領した後1ヶ月以内に戻ります。

  8. シンガポール政府による企業支援計画

    シンガポール政府はGST実施に関連する支援計画を導入しました。これらの支援計画の目的は、企業のキャッシュフローを改善すること及び企業にやさしい商環境を作ることです。

    8.1
    旅行者払戻制度(Tourist Refund Scheme)。観光客はGST登録事業者から商品を購入し且つ当該商品を持ってシンガポールから出国する際に当該商品を購入時に支払ったGSTの還付を申請できます。
    8.2
    現金主義会計制度(Cash Accounting Scheme)。当該制度は年間売上高が100万Sドルを超えない小規模企業に適用されます。
    8.3
    売上総利益制度(Gross Margin Scheme,GMS)。当該制度によると、GSTの課税基礎は製品の粗利益部分に限ります。
    8.4
    主要輸出業者制度(Major Exporter Scheme,MES)。当該制度は商品を大量に輸入する企業のキャッシュフローを改善するためのものです。
    8.5
    契約メーカー・トレーダー・スキーム(Approved Contract Manufacturer and Trader Scheme,ACMT)。当該スキームによると、企業は海外顧客の指示に従い貨物を指定されたシンガポールにおける顧客に送付する場合、当該顧客に対しGSTを受け取る必要がありません。船舶用燃料トレーダー・スキームに基づき、企業はGST登録済みの現地サプライヤーから船舶用燃料を購入する時にGSTを支払う必要がありません。
    8.6
    ハンドキャリー輸出スキーム(Hand Carried Exports Scheme,HCES)。当該スキームはゼロ税率の商品類別としての貨物を海外顧客に販売すること(シンガポール・チャンギ国際空港を通じて貨物を輸出する)に適用されます。
    8.7
    ゼロGST倉庫制度(Zero GST Warehouse Scheme)。当該制度に基づき、企業はその倉庫をゼロGST倉庫に変えることで複雑な公示手続き及びGST納付手続きをできる限り簡単にすることができます。
    8.8
    サード・パーティー・ロジスティクス・スキーム(Approved Third Party Logistics Scheme)。当該スキームに基づき、企業は自分が所有し、又は海外の委託者によって委託される貨物を輸入する時にGSTを納付する必要がありません。
    8.9
    輸入GST繰延払い制度(Import GST Deferment Scheme)。当該制度に基づき、企業は商品を輸入する時ではなく、GST申告書を提出する時にGSTを納付することができます。

  9. 罰則

    9.1
    未登録・登録遅延

    企業の年間売上高が100万Sドルを超えたが、法律に従いGST登録していなかった場合、以下の罰則が科されます。

    (1)
    GSTの登録日は法律に従い登録すべき日にさかのぼる。

    (2)
    企業は登録日から顧客に対して徴収すべきGSTをIRASに支払う必要がある(企業が顧客からGSTを受け取ることがあるかどうかにかかわらず)。

    (3)
    企業は最高10,000Sドル及び納付すべきGSTの10%相当額の罰金を科され、かつ起訴される可能性があります。


    但し、企業はGST登録後に登録遅延に関する状況を自発的に報告する場合、IRASが上述の罰則を免除する可能性が高いです。

    9.2 期限後申告

    全てのGST登録事業者は、そのGST申告書にかかわる課税期間が終了後1ヶ月以内にGST申告書を提出しかつ税金(もしあれば)を納付しなければなりません。シンガポールの内国歳入庁は申告書を遅れて提出し又は提出していない企業に対して措置を取るかもしれません。そのため、企業はある申告期間におけるいかなる業務がなくても、期限前にIRASにゼロ申告の申告書を提出する必要があります。

    GST法の規定に違反した企業は厳しい罰則を科される恐れがあります。罰則については以下を含みますが、これらに限りません。

    (1)
    企業は期限内(会計期間終了後1ヶ月以内)にGSTを納めないと、納付すべき金額の5%相当額の罰金が科されます。なお、IRASは企業へ納税通知書を発行することができます。もし企業は納税通知書発行後60日以内にまだ税金を納付していない場合、IRASは2%の追加罰金を科すことがあります。但し、追加罰金はどんな場合でも納付すべきGSTの50%相当額を超えてはいけません。

    (2)
    GST登録事業者は期限内に申告書を提出していなかった場合、IRASから賦課決定通知書(Notice of Assessment)を発行され、且つ期限後申告により納付すべき税金の5%相当額の罰金を科されます。なお、期限後に1ヶ月を超える期間ごとに提出する場合、IRASによって200~10,000Sドルの罰金を科されます。

    (3)
    企業は納税通知書(Demand Note)に規定された期限内に税金又は罰金を支払わないと、IRASが企業に対して通知をしないまま下記などの措置を取ることができます。
    • 納税義務者の銀行、雇用主、借主又は弁護士がその代理人として当該税金・罰金を支払うことを要求する。
    • 納税者がシンガポールを離れることを防止するために納税者に出国を制限する。
    • 納税義務者に対して法的措置を取る。


    上述の罰則のほか、IRASは納税者に未払い税金の2%相当額の追加罰金を科すことができます。

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