信託概要
信託とは
信託は、英国のコモン・ローに端を発して、法的拘束力がある枠組みです。委託者は財産所有者であり受託者に信託財産を移転して、受託者は信託契約書の条項に基づき受益者の利益のために資産を管理します。受託者は信託財産の法的所有権と支配権を持って、且つ受託の義務を負います。受託者は、委託者の生前及び死後に受益者の利益のために信託財産を管理します。信託財産は独立した資産であり、受託者の個人固有財産に属しません。
信託は、委託者と受託者の間で締結された「信託契約書(Trust Deed)」又は受託者の一方的な信託宣言(Declaration of Trust)を通じて確立できます。一方的な信託宣言(Declaration of Trust)で、受託者は受託者に任命されて且つ信託財産を保有していることを確認しますが、委託者の身分はこの信託宣言に記録されません。
信託は財産相続と資産管理に柔軟性を提供することができます。受託者は、信託の受益者に利益を分配する時間、金額と方式を自分の判断で決定することができます。委託者は、信託財産管理又は受益者への分配のガイドラインとして、法的拘束力がない意向書を受託者に提供することができます。
受託者は、信託条項と法律によって付与される特別な職責に基づき、資産の管理、運用や処分を行う権利と受託責任があります。
信託に関わる関係者
委託者
委託者は受託者に信託財産を移転して、信託の資産貢献者とも呼ばれます。委託者は信託の受益者にもなれますが、信託の唯一の受益者とすることができません。委託者はプロテクター等の第三者に部分権利を保持または付与することができて、これにより、信託財産に対する部分の支配権を保持します。
受託者
受託者は信託資産の法的所有者であり、信託の受益者の利益のために信託財産を持っています。受託者の決定は受益者の最大利益に合致しなければならず、且つ受益者に対して受託義務と責任を負います。
受益者
受益者は信託財産から生じる利益を受ける者であり、通常、委託者の家族や慈善組織です。信託確立後、受託者は他の人を受益者として追加できます。
プロテクター(Protector)
委託者は受託者が特定の権限を行使することを監督するプロテクターを任命することができます。信託契約書では、受託者が特定の権限を行使する前にプロテクターの書面同意を取る必要があるという規定が定められることができます。委託者は自分の家族、友達、親族や信頼できる専門的コンサルタントをプロテクターに任命でき、自分でもプロテクターになれます。
信託の機能
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相続計画
受託者は、信託契約書の条項により信託財産を持って且つ信託財産を受益者に分配します。委託者は、意向書を通じて分配の時間、金額及び方式を受託者に提案できます。家族経営の株式の集中を実現し、家族経営が子孫に引き継がれることを確保するために、受託者も家族経営の株式を保有することができます。
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資産の保護
委託者は資産の法的所有権を受託者に移転することを通じて、信託財産と委託者名義の財産を分離し、債権者の賠償請求を避けることができます。信託確立の目的が債権者を騙すことでなく、委託者が制限なしに信託を取り消す権利を留保しない限り、資産が信託に移転された後で、非常に重要な資産保護機能を実現することができます。また、子孫の配偶者を信託財産から生じる利益が受けられない非受益者に指定できて、受益者が離婚する可能性がある場合には受益者への分配を止めることができます。
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遺言認証を避ける
個人が持っている資産は通常、遺言の条項により、死後に移転されます。複数の国家と地域で資産を持っている場合は、資産所在の全ての国家と地域で遺言の認証を行う必要な可能性があります。これは面倒で時間と費用のかかる過程であり、6か月から2年までに続く可能性があります。その上に、遺産が清算され且つ死者の相続人に分配される前に、遺産税を納付する可能性があります。このような資産が信託財産であれば、順調に委託者の意向により子孫に引き継ぐことができます。
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税務計画
信託の存続期間に、香港、シンガポール、ケイマン諸島、ジャージー島の税務関連条例に基づき、信託財産から生じる利益に対しては税務申告の義務が付けません。でも、受益者が利益分配を受ける時に、受益者の税収居民身分により税務申告義務が生じる可能性があります。
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強制的な相続規則を避ける
信託財産が委託者の意向により受益者に分配されることを保証できます。厳格な法律上または宗教上の相続法がある国からの個人は、その相続人の間でその居住地の法律規定と異なる資産分配計画を実施することができまます。香港、ケイマン諸島、英領バージン諸島、ジャージー島、ガーンジー島などの普通法(コモン・ロー)管轄区域に信託を確立する場合は、委託者の希望する分配計画を実施することができまます。
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機密性
信託は、登記が不要であり、委託者と受託者の間の私的な法律上協定です。信託に関する情報は公開されません。
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慈善
慈善を目的として信託を確立することができて、信託の受益者は慈善組織や慈善目的になれます。
信託の取り消し
取り消す可能な信託
委託者は信託財産の部分又は全部を取り消し、信託財産を再び取得することができます。
取り消す不可能な信託
委託者は資産の支配権を放棄して、信託財産の返還が要求できません。特定な場合(通常、税金上の理由と資産保護の目的)により、取り消す可能な信託より有利になる可能性があります。
比較
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取り消す可能な信託
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取り消す不可能な信託
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メリット
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① 取り消す可能な信託の柔軟性
② 財産の相続
③ 能力喪失時の保護
④ 遺言認証を避ける
⑤ 機密性
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① 資産保護
② 財産の相続
③ 能力喪失時の保護
④ 遺言認証を避ける
⑤ 機密性
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デメリット
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資産保護の作用がない
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委託者が資産の支配権を放棄する
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