香港会社の取締役の役割のマニュアル
前書き
一般的に、取締役の役割及び義務は、会社定款、判例及び法規によって規定されています。取締役は、その取締役としての役割を怠った場合、民事責任又は刑事責任を問われる可能性があり、取締役としての資格を剥奪されます。
判例に重要な原則を基本的に含まれていますが、複雑な且つ調査・確認できない状況を対応することは困難です。このマニュアルの目的は、取締役がその職務を遂行し、権限行使の際に従うべき一般原則について説明します。
全ての取締役はマニュアルを読む必要があります。取締役に関するマニュアルは、香港の会社登記所(Companies Registry)、香港証券取引所(Hong Kong Exchanges and Clearing Limited)、証券先物委員会(Securities and Futures Commission)、破産管理署(Official Receiver's Office)及び香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority)のウェブサイトに読まれる又はダウンロードされることができます。取締役は上記の政府機関でマニュアルを印刷又はコピーすることもできます。
さらに、取締役は、香港董事学会(The Hong Kong Institute of Directors)が発行した『取締役ガイドライン』及び『社外非常勤取締役ガイドライン』など、取締役の法的役割と責任を詳細に検討する記事を参照する必要があります。取締役はまた、上場企業の経営を改善するために、香港証券取引所が発行した『コーポレートガバナンス・コード』を参照する必要があります。
ガイドラインは原則に過ぎず、法律上の詳細な陳述ではないことにご注意が必要です。また、判例及び法規は、明確な状況において特定の形で取締役の役割及び義務を定めることができます。取締役はその役割及び義務の性質に対して疑問がある場合、法的助言を求める必要があります。
取締役の役割の一般原則
原則の一: 会社全体の利益を前提として責任をもって誠実に行動する
会社の取締役は、会社の最善の利益のために責任をもって誠実に行動しなければなりません。つまり、取締役は、現在及び将来の全ての株主の権利及び利益を確保して行動する責任があります。会社の取締役は、職務を遂行する時、(実行可能な範囲で)意思決定の結果が会社の全てのメンバーに公平であることを保証しなければなりません。
原則の二: 会社メンバー全体の利益を優先し、適切な目的で権限を行使する
会社の取締役は権限を行使する際に、「適切な目的」を持っている必要があります。つまり、取締役の権力行使の目的は、許可された目的と異なることができません。取締役の権限を行使する基本的又は主な目的は、会社の利益のためです。基本的な動機が他の理由(1人又は複数の取締役に利益を供与し、会社の支配権を取得することなど)であることが判明した場合、取締役の権限は剥奪されます。取締役はその職務を誠実に遂行しますが、取締役の役割にも違反します。
原則の三: 正式な許可を取得しない限り、権限を委譲できず、且つ独自で判断する責任がある
会社の定款大綱及び細則又は決議によって承認されない限り、会社の取締役はその権限を委譲することができません。会社の取締役は権利行使について独自で判断しなければなりません。
原則の四: 十分な注意、スキル、努力をもって行動する責任がある
『会社条例』(第622章)第465条により、会社の取締役は十分な注意、スキル、努力をもって行動する必要があります。「十分な注意、スキル、努力をもって行動する」とは、以下のものを指します。
1. 合理的な範囲内で、全ての者が会社の取締役の権限を行使する際に、当該者は一程度の知識、スキル及び経験を有すること。 及び
2. 取締役は自身が一程度の知識、スキル及び経験を有すること。
原則の五: 個人の利益と会社の利益との相反を回避する責任がある
会社の取締役は、会社と利益が相反する行為を制限しています。
原則の六: 法律に該当しない限り、利益相反取引を行わない責任がある
会社の取締役が取引に関して大きな利益を持ち、取引相手が会社である場合、その取締役は当該責任を履行しなければなりません。会社の取締役が当該責任を履行しない場合、取締役の権限を行使する間、その取引を許可、促進又は承認することができません。また、取締役は法律を遵守しない限り、会社と取引できません。
法律により、取締役が取引におけるその利益の範囲及び性質を開示する必要があります。場合によっては、会社の定款に、取引をしようとする前にメンバー又は取締役の承認を取得する必要がある条例が含むことができます。取締役は、所定の範囲に従って関連する利益を開示しなければなりません。適切な状況では、他のメンバー又は取締役からの承認は必要です。
原則の七: 取締役の権限を利用して不当な利益を貪ることができない
会社の取締役は、取締役の権限を(直接的または間接的に)利用して自分又は他人のために不当な利益を貪ったり、会社の利益を犠牲して利益を貪ったりすることができません。
原則の八: 承認を取得しない前に会社の資産又は資料を使用することができない
会社の取締役は、会社の資産もしくは資料、又は取締役の職務から得たビジネスチャンスを勝手に使用することができません。但し、株主総会で利益関係を開示し、会社の同意を得た場合は使用できます。
原則の九: 第三者からの取締役の地位が与える個人的な利益を受け入れない責任がある
会社の取締役又は元取締役は、その権限又は取締役の権限行使により得る報酬にかかわらず、第三者からの利益を受け入れることができません。但し、会社からの利益、会社が決議を可決して許可した利益、及び業務執行取締役の地位から得られる付随的な利益の場合は例外とします。
原則の十: 会社の定款大綱、定款細則及び決議に従う義務がある
会社の取締役は、会社の定款に従って行動し、会社の定款により行われた決議に従わなければなりません。
原則の十一:会計記録を適当に保存する責任がある
会社の取締役は、会社の資料が会社の取引を表示及び説明できるために、全ての合理的な措置を講じ、会計記録を適当に保存し、且つ正確に会社の財務資料を開示する必要があります。不正取引の規定(『会社(清算及び雑則条文)条例』(第32章)第275条)の違反を回避するために、会社の取締役は会社が債務を支払うことができないことを存じる際に、会社が借款をさらに受けることを承認することができません。
参考資料:
「香港税務申告サービス」
https://www.kaizencpa.com/jp/Services/info/id/21.html