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米国会社の株主の議決権について

米国会社の株主の議決権について

議決権は、株主による会社の方針事項の決定にかかわる権利です。通常、株主名簿に記載されている株主のみが、株主総会で株主本人または代理人を通じて(無議決権株式を保有している場合を除く)議決を行うことができます。会社の株主名簿には、すべての発行済株式の所有者と株主になった登記日が記載されています。

民主主義の政治において全ての人が一票の権利を平等に有します。これと違って会社において株主の議決権が保有している株式数によって決まります。よって、会社の総株式数の 50% 以上を保有している株主は過半数以上の議決権を確保できる上に、会社を支配できる権利を握る可能性も非常に高くなります。次に、米国会社の株主の議決権について簡単に説明致します。

  1. 定足数と議決権

    1.1
    定足数の確認方法

    規定通り株主総会の招集通知が出され、株主の出席数が定足数に達しないと各事項に関して議決できないとします。この場合では、株主の出席数が定足数に達しているかどうか(議決権には決定力があるかどうか)は株主の出席人数ではなくて株式数によって決まります。通常、1株に(定款に別段の定めがある場合を除き)は1個の議決権を持ちます。株主総会に出席した株式の数が過半数以上あれば定足数に達することと認められます。

    例えば: 会社は 20,000 株を発行し700 人の株主から集金しています。定足数の規定に従って株主総会を開くためには10,001 株以上の直接出席または代表出出席が必要です。定足数に達していない場合、株主は株主総会では議決を行っても意味がありません。総会を開く時点で定足数に達していれば、総会の開会中に退席しても影響がなく、有効に開いたことと認められます。一方、取締役会の定足数規定は議決を行う際に、席を外した取締役がいれば定足数に達していないことになります。

    1.2
    定足数に達した場合の議決

    (1)    取締役の選任

    定足数に達した後、株主総会によって取締役の選任を行う際に、立候補された者は株主の過半数以上の賛成を獲得したかどうかに関係なく、立候補の取締役について最も多くの投票を獲得した場合、取締役につきます

    (2)    定款変更

    定款変更等株主の議決による一般事項に関して、権限の相違があります。ほとんどの州では、事項ごとに対する実際の議決権の過半数以上の確保のみが要求されています。

    例えば: 会社は合計 20,000 株を発行しました。株主総会には、12,000個の議決権(定足数に達します)が出席しました。12,000個の議決権の出席数の中には、議案に対して実際に議決を行ったのは10,000個だけです。従来の原則によれば、決議には、出席した株主の議決権の過半数以上の賛成で6,001個の賛成票が集まったら可決されます。しかし、今の原則では、議案が可決されるために必要な賛成票は 5,001 票さえあればいけます、即ち実際に議決を行った株式総数の過半数以上を確保すれば良いです。

    (3)    取締役の解任

    任期満了前に取締役の解任をする場合、デラウェア州では現在依然として従来のやり方で議決権の過半数を有する株主が出席し出席した株主の議決権の過半数以上の賛成が必要です。

    例えば: 会社は 20,000 株を発行しました。株主総会では、出席した株主の持ち株の数が12,000 株です(定足数に達しています)。このうち、実際に取締役を任期満了前に解任すべきかどうかについて議決権を行使する株主の株の数が10000株です。上記の場合ではデラウェア州では取締役を解任することはできません。解任するには、議決権を行使できる株主の議決権の過半数以上の賛成が必要であり、出席した株主の持つ議決権の過半数以上の賛成又は実際に行使された議決権の過半数以上の賛成によるものではありません。発行済み総株式数が 20,000 株で、総株式数の過半数以上の賛成を得る場合に限り (10,001 株以上の賛成) 取締役を解任することができます。当該例の中では、実際議決権が行使された株数が10,000 票しかない為、上記に説明した要件を満たすことができません。

    一方、現在の見方では、取締役の解任に関しては実際に行使された議決権の過半数以上の賛成でさえを得ればできます。上の例では、、実際に取締役を任期満了前に解任すべきかどうかについて議決権を行使する株主の株の数が10000株ですので、5,001株以上の賛成があれば、取締役の解任をすることができます。

    (4)    会社の根本的な変更への承認

    株主の議決権の行使による合併などの根本的な会社変更の決定の場合、テキサス州やオハイオ州など州では依然として従来の考え方が通用され、議決権を行使できる株主の議決権の3分の2以上の賛成を獲得しなければならないとされています。米国模範会社法(2016年の改正版)では根本的な変更を行う際に議決権を行使できる株主の議決権の過半数以上の賛成を獲得すればよいと主張されています。よって、当該法案の主張に基づき、根本的な変更の決定は実際に当該

  2. 累積投票

    累積投票は取締役会で少数株主の議決権の増加等株主による取締役の選任に用いられる方法です。株主による取締役の選任方法には直接投票と累積投票があります。どちらの方法で行われても、取締役候補者は多数決原則にのっとり、たとえ総投票数の過半数を確保できなかったとしても、候補者達の中で最多数を得た者が選任されます。

  3. 代理投票

    株主は代理人によって議決権を行使することができます。即ち、株主と代理人との間で委任契約を結び、株主が委任者として受任者の代理人(代理人)を委任・指定して議決権を行使します。米国模範会社法 (2016年改正版)では、「proxy」という用語を用い、株主の代わりに議決権を行使する代理人のことを指し、株主が「委任状にサイン署名するか若しくは電子メールの内容によって議決権の行使の委任を行うか又はその他方法で委任することができると規定されています。裁判所は、代理人の氏名、株主総会の日付、または議決権を行使する日付を省略した委任することにお勧めです。さらに、代理人として指定された者は株主である必要はありません。

    3.1
    代理人に付与された代理権の有効期間はどれくらいありますか?

    ほとんどの州では、委任書類によって期限に関する規定が別段に定められた場合を除き、代理権限が一般的に11ヶ月間と黙示的に認められています。代理期限の7年間等のはっきりとした時効が設けられて、規定期限を超えた場合、委任書類が無効になると規定されている州もあります。ほとんどの州では委任書類に規定された期限内ならずっと有効であり、期限について定めなかった場合に11ヶ月となります(理論上毎年の株主総会の開きの前に改めて委任書類を作成すべきと思われます)。

    代理投票あくまでも代理関係に基づきなされた行為なので、株主はいつでも自由に委任を撤回することができます。したがって、代理投票の撤回は規定された代理期限に拘束されません。撤回の意思表示が明示的または黙示的にすることができます。例えば、後順位の代理投票の委任が前順位の代理投票と相違がある場合に前順位になされた代理投票が撤回されたとみなされるため、委任書類には日付を記入しなければならないと要求されています。

    争議が生じる場合、選任の審査員は、議決権の行使を認めるかどうかを決定する為、株主による代理投票の委任書類の日付を確認しなければなりません。株主の個人意思にもよりますが、代理投票を委任した株主が自ら株主総会に出席した場合、代理投票の撤回となる場合があります。又、株主は株主総会で代理投票の撤回の意思表示を求められることもあります。株主の死亡によって、特に会社が株主の死亡の事実を知った場合には、代理投票の委任も撤回されたこととみなされます。

    3.2
    代理人の委任の撤回が不可能な場合はありますか?

    通常、委任書類に撤回不可能の意思表示が書かれても意味がありません。ただ、最高裁判所の判例によって撤回不可能の代理投票の委任が代理人の利益が目的とする者である場合に、撤回不可能となります。たとえば、代理投票の受任者が株式の抵当権者の場合(融資してもらうための抵当権設定の場合)その株式について代理人の利益もついています。

    例えば: S は年次株主総会の基準日株主であるため、株式総会で投票する権利があります。基準日の後、株主総会の開会の前に、S は P に株式を売却しました。S は、P に年次株主総会で投票権の行使を委任し、且つ当該委任が何ら理由によっても撤回が不可能であるような内容を含めた委任書類にサインしました。委任書類に記載されている撤回不可能の意思表示及び当該委任書類が代理人の利益が目的とするものなので、撤回することができません。

    最後に、株主が代理人を指定することで投票権を行使することができることを強調します。ただし、取締役による投票においては代理投票が許されません。公共政策により、取締役による投票において各取締役の独立判断が求められます。したがって、取締役による代理投票が無効とみなされます。

参照:
[1] Richard D. Freer. The law of corporations in a nutshell. West Pub. Co, 2020.

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