米国会社の「抜本的変更」における株主の株式買取請求権
むかし、会社の「抜本的変更(Fundamental Changes)」は株主全員の承認が必要でした。そのため、各株主は拒否権を有します。株主1人でも「反対票」を投じた場合、その変更は無効になります。現行の法律では、上述のやり方が否定され、指定された株式数の割合による承認を承認します。拒否権の代わりに、現代法は「抜本的変更」を反対する株主に「株式買取請求権(Appraisal Right)」を与えています。
株式買取請求権は、単に株式を評価する権利ではなく、会社に株式を公正価値で買い戻させる権利です。各州の法令は当該権利を導入し、当該権利を行使する手続を定めています。株主は法令に定める要件に従わない場合、権利を放棄することとみなされます。
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株式買取請求権が行使できる場合
株式買取請求権が行使できる場合を確認するために、関連法を精査することは重要です。各州の法律条項は次のように異なっています。
(1)
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一部の州では、会社設立書類を変更する時(ある種類株主に損害が発生する時)に株式買取請求権が発生します。
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(2)
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一部の州では、合併の双方(消滅会社と存続会社)の株主は株式買取請求権を有します。一方、一部の州では、消滅会社の株主のみは株式買取請求権を有します。
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(3)
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ほとんどの州では、抜本的変更について議決権を有する株主のみが株式買取請求権を有します。いくつかの州では、議決権のない株式の保有者であっても株式買取請求権を行使することができます。
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一般的に、議決権を有する消滅会社の株式の保有者、ほとんどの資産を譲渡する会社の株主、及び「株式交換」で株主を取得する会社の株主は、株式買取請求権を有します。
しかし、会社は上記の変更を行ったとしても、株主は株式買取請求権の行使には重要な制限があります。ほとんどの州では、会社の株式が公開されている場合、又は株主の人数が多い場合(通常は2000人以上)、株式買取請求権は発生しません。従って、株式買取請求権は非公開会社のみに発生します。原因は、非公開会社には株式市場が存在しないため、市場価値もないことです。
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株式買取請求権の行使方法
ほとんどの州の法規制において、反対株主は株式買取請求権を行使するには3つの流れを踏む必要があります。
(1)
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まず、各株主は議決権を行使する前に、反対株主は会社に対し、変更を反対する旨及びもし変更が可決した後株式を買い戻させる旨を提出する必要があります。
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(2)
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次に、反対株主は当該変更に棄権するか、反対票を投じなければなりません。
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(3)
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最後、会社より変更が可決されたお知らせを受け取った後の所定期間内(通常20日)、反対株主は書面によって会社に株式を買い戻させる要求を提出し、株式を会社に渡す必要があります。
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会社は、株主の要求を受け入れるか拒否するかの責任を有します。株主は、低い金額の買戻しを拒否することができます。関連法令により、場合によっては会社又は株主は株価の評価を求める訴訟を提起することができます。会社は株主の要求した日から60日以内に訴訟を提起する必要があります。さもなければ、会社は株主の要求額で株価を支払う義務を負うことになります。
一部の州では、株主と会社は株価について合意できない場合、株主は訴訟を提起しなければなりません。訴訟となった場合、ほとんどの州の裁判所は、株式の価値を評価する鑑定人を任命します。例えば、裁判所は、会社が合併する直前及び全ての資産を売却する直前の株主の株式の価値を評価します。訴訟完了後、多くの州の裁判所では、公正価値の見積もりに対する双方の誠意に応じ、弁護士費用を会社に対して請求する権限を有しています。
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例外の場合
一部の州では、行われた行動が詐欺的または不当なものでない限り、株式買取請求権は株主が抜本的変更を対応する唯一の措置となります。一般的に、合併などの抜本的変更は正当な目的のためではなく、少数株主を排除するために行われるものと考えられています。この場合には、株主は株式買取請求権を行使することだけでなく、合併などの抜本的変更の取消しを求める訴訟を起こすことができると主張します。抜本的変更はすでに終了した場合、反対株主は訴訟を起こし、「無効損害賠償(Rescissory Damage)」を請求することができます。無効損害賠償とは、変更が承認されなかったと仮定する場合の地位に戻して算出された金銭的賠償です。
デラウェア州最高裁がWeinberger事件で認めたように、株主の不満の原因はキャッシュアウト・マージャーに関する条項が不十分であるというものである場合、株式買取請求権は唯一の措置となります。また、詐欺又はその他の違法行為に関する請求は株式買取手続において扱われるのか、あるいは別途に訴訟を起こすのかについても、州によって異なります。
最後にご留意が必要な点は、株式買取請求権の行使は、企業にとって深刻なキャッシュの流出を引き起こす可能性があることです。従って、合併契約などでは、多数の株主が株式買取請求権を行使した場合に契約を中止することを規定するのが一般的です。
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