従業員共益信託
従業員共益信託(Employee Benefit Trust、以下「EBT」という)は、資産(通常は会社の株)を保有しています。独立した受託者は、信託の形で会社の従業員の全員又は一部にその資産を授与します。EBT の目的は従業員を惹きつける・引き留める・励ますことです。EBT は、従業員の利益を株主の利益と一致させて従業員の忠誠心及びコミットメントを向上させます。その結果、会社は勤勉で向上を目指している従業員より利益をもたらし、従業員は雇用主の成功による大きな報酬の取得を期待することができます。
EBT は通常、裁量信託(Discretionary Trust)として設立されます。全ての従業員又は高級管理職等に指定される従業員は受益者になれます。信託の条項により、受託者は従業員共益信託の管理・運営において幅広い権利を有するため、各種類の利益(例えば、受益者への株式、株式オプション又は現金等)を交付することができます。
会社は目的に応じて、受益者を会社の従業員全員でも一部の従業員(例えば、高級管理職)でも設定することができます。
EBT を管理する際に、管理委員会又は会社に指定される者のアドバイスが拘束力がないにもかかわらず、通常、受託者はそのアドバイスに従います。そのアドバイスには、EBT の保有する資産の種類(会社の株式)に関するアドバイス、退職する従業員から株式を購入するアドバイス、目標を達した従業員へ福利厚生を付与するアドバイスが含まれます。
EBT は、弾力性があり、株式及び現金等の各種類の福利厚生を受益者に提供することができます。例えば以下の種類が含まれます。
(1) 譲渡制限付株式
(2) 条件付株式
(3) 株式オプション
(4) 現金
(5) ファントムストック
EBT を通じて運営される取り決めの種類は、会社のニーズ及び目的に合わせて調整されています。会社は EBT を通じて 1 つ又は複数の取り決めを運営し、授与を決定してから履行するまでの間に株式を保有することができます。M&A 又は退出の事項(例えば、証券取引所への上場又は私的な株式売却)が発生した後、会社は EBT を使用する場合が多いです。同様に、会社は従業員にインセンティブを与える方法として EBT を設立したいと考える可能性があります。
EBT を使用するメリットは以下の通りです。
(1)
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資産保護:会社が破産した場合、会社の債権者は EBT の保有する株式又はその他の財産を取得することができません。財産は EBT に残り、従業員の利益のために使用されます。一般的に、会社又はその関連会社は EBT の受益者から除外されます。
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(2)
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EBT は株式の内部市場の構築に使用できます。特に、没収された株式又は退職者によって売却される必要のある株式を処理する既存の市場がない民間会社にとって非常に役立ちます。受託者は内部市場で上述の株式を取得し、将来の奨励のためにリサイクルすることができます。
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(3)
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通常、会社は独立した専門的な受託者を EBT の受託者として委任します。受託者が受益者の利益のために行動しなければならないため、従業員は安心できます。これにより、会社に関する事業体が受託者として行動する場合に発生する可能性のある潜在的な利益相反を回避することができます。
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(4)
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優遇税制:ジャージー又はガーンジーにおける EBT は、ジャージー又はガーンジーの居住者たる受益者がいない限り、所得税及びキャピタルゲイン税の対象になりません。
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EBT への拠出金及び EBT から受け取る利益を含む税務上の対応は、通常、雇用主及び受益者と関わります。会社及び従業員の受益者に対する税務上の影響について税務アドバイスを求めることがとても重要です。