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米国の超過事業損失制限の概要 TCJA法案とCARES法案に基づいて

米国の超過事業損失制限の概要
TCJA法案とCARES法案に基づいて

2017年12月22日に米国で「Tax Cuts and Jobs Act」(TCJA)が成立されました。2017年12月31日~2026年1月1日(当日を含まず)の間の課税年度に非法人納税者の超過事業損失(Excess Business Loss)を制限する法案です。

TCJA法案では、非法人納税者の超過事業損失限度額を制限しました。超過事業損失は控除額として認められません。認められない損失額は、貿易または事業からの総所得/利益に対するすべての貿易または事業の控除/損失の合計額から、250,000ドル(夫婦が共同で申告する場合は500,000ドル。金額はインフレに伴い毎年度調整されます)の閾値を差し引いたものです。閾値を超える損失は現在損金算入できませんが、純営業損失(NOL)繰越ルールが適用され、次の課税年度に無期限に繰り越すことができます。控除額が高くても課税所得の80%以内に抑えなければなりません。上記の「貿易または事業」とは、報酬または利益を獲得することを目的で、継続的かつ定期的に行う活動です。

2020年の「新型コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法」(CARES法)は、技術的な修正を何箇所行ったとともに、2018年~2020年の課税年度に関係規定をさかのぼって一時的に無効にさせました。詳細規定については、下記の3点にまとめて説明します。

  1. 米国の超過事業損失制限の適用対象

    この規定は、基本的にC法人以外のすべての納税者(個人、個人事業主、パートナーシップのパートナー及びS法人の株主)に適用されます。パートナーシップまたはS法人の場合、超過事業損失制限規則は、パートナーまたは株主が収入、損失、利益、または控除額が割り当てられた後に適用されます。さらに、この規定は一部の信託に適用される場合があります。

  2. 米国で超過事業損失の処理について

    TCJA法案の前、納税者はNOLを本課税年度の2年間前に繰り戻すかまたはその20年後に繰り越すことができました。しかし、TCJA法案成立後、納税者はNOLを本課税年度の2年間前に繰り戻すことは禁止されるのになりましたが(農業経営者を除く)、無期限に本課税年度以後に繰り越すことは可能になりました。また、2018年1月1日以降に発生したNOLを納税者課税所得の80パーセンと相殺することのみが可能です。残りは繰り越されます(CARES法案の成立と伴い、この規則は2021課税年度から適用されます)。

  3. 米国のCARES法案が超過事業損失制限に与える影響

    (1)
    CARES法案によりTCAJ発効日が延期になりました。

    超過事業損失制限はもともと2017年にTCJAの一部として制定され、2018課税年度から適用されましたが、CARES法により発効日がさかのぼって延期されました。CARES法案により、超過事業損失制限は2018年度、2019年度、2020年度三つの課税年度には適用されず、2021年度から有効になりました。TCJAの純営業損失(NOL)制限も、CARES法によって遡及的に延期されました。2018年、2019年、2020年の課税年度に発生した損失は引き続き繰り戻すことができ、しかも繰り越されるNOLには80%の制限が適用されません。

    (2)
    CARES法により、超過事業損失の計算について技術的な修正を行いました(2021課税年度から適用開始)

    (a)  従業員としてのサービス(例:W-2賃金)は、超過事業損失制限枠内の業務報酬ではありません。
    (b)  納税者の控除額を決定する際に§172と§199Aは考慮しません。
    (c)  超過事業損失を計算する際に貿易または事業からの純資本利益(損失ではない)を考慮してもいいですが、納税者の純利益全体に限定されます。

  4. 米国のTCAJ法案が再有効になりました

    2021年度からTCAJ法案は再有効になり、非法人納税者の超過事業損失を制限し、個人納税者が相殺できる損失限度25万ドル、夫婦で共同申告する場合が50万ドルになる(インフレに伴い毎年調整される)と規定されました。納税者は損失を被った場合、無期限に翌年以後にNOLを繰り越すことができます。ただし、課税所得の80%以内でなければなりません。

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