シンガポール会社の実質的所有者の概要
2017年3月31日以降、シンガポール会社、外国会社のシンガポール支店及びミテッドパートナーシップ(免除されない場合)は、法により会社、支店、ミテッドパートナーシップの実質的所有者(Registrable Controller)の情報を実質的所有者名簿(Register of Registrable Controllers:RRC)に記載し、実質的所有者名簿を保存しなければなりません。必要に応じて、会社、支店、ミテッドパートナーシップはその名簿を公的機関に提出する必要があります。
実質的所有者とは、株式のある会社の25%以上の持分を直接的もしくは間接的に保有し、又は株式のある会社の25%以上の総議決権数を直接的もしくは間接的に保有する個人又は法人です。
免除されない限り、シンガポールで登録された会社及びミテッドパートナーシップは設立後30日以内に実質的所有者名簿を作成する必要があります。会社に対する重大な支配権を有する者を特定し、実質的所有者名簿を通じて会社の受益権の情報を登録・維持するために、会社は合理的な措置を講じる必要があります。
会社はシンガポール会計企業規制庁(ACRA)及びその他の公的機関の職員の要件に応じて実質的所有者名簿を提出します。但し、会社は会社の株主及び社会に実質的所有者名簿に記載されている情報を提供・開示することができません。
所有者又は会社が実質的所有者名簿に関する要件に該当しない場合、所有者又は会社やその全ての役員は法律違反です。有罪判決を受けた場合、各違法行為について5,000シンガポールドル以下の罰金に処します。
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シンガポール会社の実質的所有者
実質的所有者とは以下の各項のいずれかに該当する法人又は個人です。
(1)
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株式のある会社の25%以上の持分を直接的又は間接的に保有する
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(2)
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株式のある会社の25%以上の総議決権数を直接的又は間接的に保有する
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(3)
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株式のない会社の25%以上の会社資本金又は配当金を直接的又は間接的に保有する
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(4)
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取締役会に多数の議決権を有する取締役を委任・解任する権利を直接的又は間接的に保有する
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(5)
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株主総会に25%以上の議決権を直接的又は間接的に保有する
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(6)
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会社で重要な影響力又は支配権を有し、又は実際に行使した
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個人たる実質的所有者とは会社に対して重要な利益又は支配権を持つ個人です。法人たる実質的所有者とは会社に対して重要な利益又は支配権を持つ法人です。
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実質的所有者名簿の作成と維持
シンガポールで登録された会社及びミテッドパートナーシップは設立後30日以内に実質的所有者名簿を作成する必要があります。
会社は合理的な措置を講じ、会社の実質的所有者を特定し、その情報を取得する必要があります。「合理的な措置」とは、会社は最低毎年に会社の実質的所有者と判断した(もしくは判断する合理的な理由がある)者、又は実質的所有者を知っている(もしくは知る可能性がある)者に通知を発行することです。
会社は電子版又は紙版の通知書を発行できます。当該事項は会社の秘書役が実行できます。通知書は発行前に取締役又は秘書役の署名が不要です。
会社は実質的所有者の情報を確認した日から2営業日以内に実質的所有者の情報を登録・変更する必要があります。実質的所有者の情報を確認しない場合、会社は名簿に現在の実質的所有者の情報を登録・変更し、実質的所有者の情報を確認しないという旨の説明を添付しなければなりません。
実質的所有者名簿は、会社の登録住所又は会社が指定する設立代理人の登録住所に保存されなければなりません。必要に応じて、当該名簿は会計企業規制庁及びシンガポール警察の商務部、汚職行為調査局や内国歳入庁局等の特定の公的機関に提出される必要があります。
会社は実質的所有者名簿に記載されている情報を開示することができません。監査人も当該名簿を点検する権利がありません。
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実質的所有者名簿に記載されている情報
個人たる実質的所有者:
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英語の氏名
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英語の別名(有する場合)
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住所
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国籍
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身分証又はパスポートの番号
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出生年月日
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実質的所有者となる日
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実質的所有者となくなった日
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法人たる実質的所有者:
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英語の氏名
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会計企業規制庁からの登録番号(UEN)
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登録住所
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事業形態
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設立場所と設立の根拠法(例えば、香港の「会社条例」又は日本の「会社法」)(適用する場合)
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設立場所の会社登録機関の名称(例えば、香港の会社登記所又は日本の法務局)(適用する場合)
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会社登録番号(シンガポール会社でない場合)
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実質的所有者となる日
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実質的所有者となくなった日
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会社からの通知書を受け取った者:
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個人情報(実質的所有者の場合)
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実質的所有者を知る者の情報
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実質的所有者名簿の作成の免除
シンガポールで設立された以下の会社は実質的所有者名簿の作成が免除されます。
(1)
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シンガポールが承認した証券取引所に上場している会社
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(2)
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シンガポールの金融機関
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(3)
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シンガポール政府が100%所有する会社
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(4)
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公益を目的とする公益法律に基づいて設立された法定機関が100%所有する会社
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(5)
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(1)~(4)に該当する会社が100%所有する子会社
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(6)
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株式がシンガポール国外の証券取引所に上場されており、その証券取引所に規定されている管理や開示の要求及び会社の実質的所有者の完全な透明性に関する要件の対象となる会社
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上記の(1)~(6)のいずれかに該当しない限り、清算、破産、行政、登録抹消の手続を行っている会社は実質的所有者名簿の作成が免除されません。
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会社役員と実質的所有者の責任
シンガポールの「会社法」(第386AF条)により、申告義務を有する会社は設立後30日以内に実質的所有者名簿を作成・保存しなければなりません。
申告義務を有する会社は「会社法」で規定されている義務に基づき、個人又は法人たる実質的所有者に通知し、必要な情報及び書類を提出させる必要があります。義務は以下の通りです。
(1)
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情報を調査・取得する義務
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(2)
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期限内に情報を更新する義務
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(3)
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不正確な情報を訂正する義務
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個人及び会社は実質的所有者であり、又は自分が実質的所有者だと信じる場合、以下の義務を有します。
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(1)
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情報を提供する義務
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(2)
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情報変更を提供する義務
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罰則
会社が実質的所有者名簿に関する要件に該当しない場合、会社及びその全ての役員は法律違反です。有罪判決を受けた場合、各違法行為について5,000シンガポールドル以下の罰金に処します。
自分が実質的所有者であることを知っている、または知っておくべき者は「会社法」の要件に該当しない場合に法律違反です。有罪判決を受けた場合、5,000シンガポールドル以下の罰金に処します。
関連資料:
シンガポール会社設立プロモーションパッケージ