香港新会社条例における株式の額面価格の廃止について
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紹介
香港の新会社条例(以下「新条例」という)は、2012年7月12日に立法会で可決されました。既存の会社条例(第32章)(以下「既存条例」という)の最後の見直しや改正は1984年でした。既存条例の条項が主として1929年の英国会社法に基づくため、既存条例を全面的に改正する必要があると考えられています。
発効日から、「授権資本」及び「額面価格」の概念は無くしました。新条例の施行前又は施行後に発行された否かを問わず、全ての株式は無額面になります。会社定款に記載された授権資本及び額面価格に関する全ての条項は削除されたものと見なされます。新条例において、株主資本は発行済み株式の価格、株式プレミアム及び資本償還準備金で構成されます。
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額面価格の廃止
2.1 変更点
既存条例により、額面価格とは、株式が発行される最低価格を指します。
新条例は、強制的な無額面株式制度を採用しています。新条例の施行前又は施行後に発行された否かを問わず、無額面株式制度は全ての株式に適用されます。
2.2 実際の影響
株式の額面価格の廃止に伴い、「授権資本」の概念も無くしました。新条例により、既存会社の文書に記載された授権資本に関する条項は削除されたものと見なされます。
株主は特別なニーズを持っている場合、特別決議で会社定款を変更し、発行可能株式総数に関する条項を追加することができます。その後、普通決議で発行可能株式総数を変更することができます。それにより、取締役が株式を発行する能力が制限され、授権資本の制限の効果と類似です。
新条例には、株式の発行価格に関する要件や制限がありません。株式の発行価格は取締役によって決定されます。取締役は発行価格を設定する際に受託者としての責任を負う必要があります。
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過渡的措置に関する条項
3.1 変更点
新条例附属書11には、関連する過渡的措置の条項があります。その目的は、既存会社が無額面株式制度に該当するために既存の株主資本及び定款を変更する必要がないようにすることです。「過渡的措置」と呼ばれていますが、措置は無期限に有効です。
新条例発効日前に締結された契約書、決議、信託契約及びその他の書類に明記又は言及された株式の額面価格が、発効日前の1日の額面価格の参考と見なされます。
発効日から、株式プレミアムの金額及び資本償還準備金は会社の株主資本の一部になります。但し、発効日の直前の株式プレミアムの金額は、新条例に許可された用途で使用できます。
附属書11の各過渡的措置の目的は、無額面株式制度のスムーズな施行です。条項の1つは、発効日前の発行済株式の未払込部分に対する株主の責任は、株式が無額面になるということからの影響を受けないと述べています。
3.2 実際の影響
過渡的措置の条項がありますが、会社はその定款を変更し、無額面株式制度に対応する必要があります。
過渡的措置が香港でのみ有効であり、必ずしも外国の裁判所に適用されると限らないため、株価に関する既存の契約は、特にその契約に適用される法律が香港の法律でない場合、評定を行い、内容変更が必要か否かを検討する必要があります。
株式プレミアムの許可された用途に関する条項を利用しようとする会社は、以前の株式プレミアムの記録をアカウントに保持し続ける必要があります。
株式プレミアムは利用不可になりますが、救済合併は引き続き有効です。既存条例により、会社買収による株式発行から生じたプレミアムは、株式プレミアムに計上しならず、代わりに存続会社の資本準備金に上乗せます。新条例により、会社の買収によって対価として発行された株式は、会社の株主資本の代わりに取得された株式の引受株主資本になります。取得された株式の価値が引受株主資本の価値を超えることを反映するために、準備金の合併と同じ方法で会計処理する必要があると予測されます。