中国が『社会保険法』を採択
「中華人民共和国社会保険法」は中華人民共和国第十一回全国人民代表大会常務委員会第十七回会議により2010年10月28日に採択され、公布され、2011年7月1日より施行されます。
2007年以前、中国には社会保険に関する具体的な法律がありません。「中華人民共和国社会保険法」は意見募集草案が2007年12月に公布され、採択される前に4回改正されました。当時の中国「労働法」は従業員が社会保険を享受する権利があると規定されていましたが、地方政府は政策の解釈及び実施基準が異なっていました。また、一部の雇用単位は社会保険料を支払わなく、又は支払われるべき金額より低い社会保険料を支払いました。一部の農民工はそれらの福利厚生を理解しないため、社会保険料の支払を拒否しました。当該法律は、中国の最初の社会保険制度に関する法律であり、「労働法」が直面する障害を乗り越え、労働者の権利及び利益を保護する上で非常に重要です。
「社会保険法」は義務付けられている5つの基本的な社会保険制度を規定しており、中国の全ての雇用単位及び従業員に適用されます。
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基本養老保険
常勤従業員(都市で働く農村住民及び中国で働く外国人を含む)は基本養老保険に加入しなければなりません。雇用単位及び従業員は国の規定により基本養老保険料を分担して納付し、それぞれ賃金総額の一部を基本養老保険料として納付します。雇用単位は国が規定した当該単位の従業員の資金総額の割合により基本養老保険料を納付し、基本養老保険統括管理基金に計上する必要があります。従業員は国が規定した本人の賃金の割合により基本養老保険料を納付し、個人口座に計上する必要があります。
従業員のない個人経営商工業者、雇用単位で基本養老保険に加入していない非全日制従業員、及びその他の非正規労働者は基本養老保険に加入する場合、国の規定により基本養老保険料を納付し、基本養老保険統括計画基金及び個人口座にそれぞれ計上する必要があります。
個人は統括管理地域を跨って就業する場合、その基本養老保険関係が本人と共に移転し、納付年数が累計して計算します。
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基本医療保険
従業員は従業員基本医療保険に加入しなければなりません。雇用単位及び従業員は基本医療保険料を分担して納付します。非全日制従業員及びその他の非正規労働者は、個人的に従業員基本医療保険に加入することができ、国の規定により基本医療保険料を納付します。
個人は統括管理地域を跨って就業する場合、その基本医療保険関係が本人と共に移転し、納付年数が累計して計算します。
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労災保険
従業員は労災保険に加入しなければなりません。従業員は労災保険料を納付しませんが、雇用単位は社会保険行政部門が制定した保険料率により労災保険料を納付します。
従業員は業務に起因して事故傷害を受け、又は職業病に罹患し、且つ労災認定を行った場合、労災保険待遇を享受します。そのうち、労働能力鑑定により労働能力の喪失が判断された場合、障害待遇を享受します。
従業員が以下の事由のいずれかによって業務中に負傷又は死亡した場合は労災と認定されません。
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故意に罪を犯した場合
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酒に酔う又は麻薬を吸う場合
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自傷又は自殺の場合
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法律、行政法規が規定するその他の場合
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労災により生じた以下の費用は、国の規定により雇用単位が支給します。
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労災の治療期間の賃金及び福利厚生
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五級、六級の障害従業員が毎月受給する障害手当金
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労働契約の終了又は解除する際に享受すべき障害者就業一括補助金
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従業員が所属している雇用単位が法により労災保険料を納付せず、労災事故が発生した場合、雇用単位は労災保険待遇を支給します。
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失業保険
従業員は失業保険に加入しなければなりません。雇用単位及び従業員は失業保険金を分担して納付します。失業保険金の基準は、省・自治区・直轄市の人民政府によって確定し、都市住民最低生活保障基準を下回ってはなりません。
雇用単位は、失業者のために遅滞なく労働関係の終了又は解除した旨の証明書を発行し、且つ労働関係の終了又は解除した日から15日以内に失業者名簿を社会保険取扱期間に報告しなければなりません。
個人は統括管理地域を跨って就業する場合、その失業保険関係が本人と共に移転し、納付年数が累計して計算します。
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出産保険
従業員は出産保険に加入しなければなりません。従業員は出産保険料を納付しませんが、雇用単位は国の規定により出産保険料を納付します。
雇用単位が既に産保険料を納付した場合、その従業員は出産保険待遇を享受します。従業員の就業していない配偶者は、国の規定により出産医療費用待遇を享受します。出産医療費用待遇には出産医療費用及び出産手当金が含まれます。
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雇用単位の義務
雇用単位は、設立日から30日以内に営業許可証、登記証書又は単位の印章をもって、現地の社会保険取扱機関に登記を申請しなければなりません。雇用単位は社会保険登記事項が変更した場合、変更日から30日以内に社会保険取扱機関に社会保険登記の変更を行わなければなりません。
雇用単位は従業員の採用日から30日以内に当該従業員のために社会保険取扱機関に社会保険登記を申請しなければなりません。社会保険登記を行わない場合、社会保険取扱機関はその納付すべき社会保険料を査定します。
雇用単位は自ら社会保険料を申告し、期間内に満額納付しなければなりません。不可抗力等の法定事由を除き、延期納付、減免をすることができません。雇用単位は従業員が納付すべき社会保険料を源泉徴収し、納付し、毎月社会保険料を納付した詳細を従業員本人に通知しなければなりません。
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法的責任
雇用単位が社会保険登記を行わない場合、社会保険行政部門は定める期限内に改善するよう雇用単位に命じます。期限を超過して改善しない場合、雇用単位は納付すべき社会保険料の1倍以上3倍以下の罰金に処し、その直接責任を負う主管理者及び他の直接責任を負う管理者は500元以上3,000元以下の罰金に処します。
雇用単位が期間内に社会保険料を満額納付しない場合、社会保険料徴収機関は定める期限内に納付又は追納するよう雇用単位に命じ、且つ未納の日から1日あたり1万分の5の滞納金を追徴します。期限を超過して納付しない場合、関連する行政部門は未納金額の1倍以上3倍以下の罰金を課します。
雇用単位が期限を超過して社会保険料を満額納付又は追納しない場合、社会保険料徴収機関は銀行又はその他の金融機関で雇用単位の預金口座を調査することができ、且つ県級以上の関連する行政部門に対して、社会保険料の振り替えの決定を下し、その口座開設銀行又はその他の金融機関に社会保険料の振り替えを書面で通知するよう申請することができます。
雇用単位の口座の残額が納付すべき社会保険料を下回る場合、社会保険徴収機関は当該雇用単位に対して、担保を提供し、納付期間を延長する旨の契約書を締結するよう要することができます。
雇用単位が社会保険料を満額納付せず、かつ担保を提供しない場合、社会保険料徴収機関は人民法院に納付すべき社会保険料に相当する価値の財産を仮差押え、差押え、競売するよう申請し、競売による所得を社会保険料に充当することができます。
関連資料:
[
中国本土における会社設立サービス]