英国の付加価値税の簡易課税制度
付加価値税(Value Added Tax:VAT)の簡易課税制度(Flat Rate Scheme:FRS)は英国政府が提供する小規模企業向けのVAT額を計算する簡単な方法です。簡易課税は、VATの計算及び記録管理を簡素化することにより、企業の管理負担を軽減することを目的としています。
VAT簡易課税制度により、要件を満たす企業は、売上高に定めた簡易課税率(Flat Rate)をかけてVATを算出できることになりましたが、仕入税額を控除できなくなりました。
簡易課税を利用する要件には企業の事業種類に加えて、課税売上の推計額が15万ポンド以下であるか否かなどその他の要件が含まれています。要件を満たす企業は、VAT登録を申請する際に簡易課税を選択することができます。
企業は初回目のVAT登録の場合、要件を満たして再び簡易課税を適用する場合、及び譲渡されて経営を続ける場合、登録後最初の1年間に1%軽減を受けます。
啓源は、簡易課税制度選択の申告代行サービスを提供しています。初回目のVAT登録をする企業に向けるサービス
料金は400ポンドとなります。標準税率から簡易課税率への変更を申請するVAT登録済の企業に向けるサービス
料金は200ポンドとなります。
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付加価値税の簡易課税制度
簡易課税制度は、売上・仕入を記録したり、VAT額を計算したりする企業の管理負担を軽減することを目的としています。簡易課税制度において、VAT額は売上高に定める税率をかけて算出されます。その税率は標準税率より低く、英国の歳入関税庁(Her Majesty’s Revenue and Customs:HMRC)によって企業の事業種類に応じて制定されるものです。
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税率
VATの簡易課税制度における税率は事業区分によって異なり、一般的に4%~16.5%となります。具体的な簡易課税率については弊社にお問い合わせください。以下は、一般的な事業に適用されるVAT簡易課税率です。
事業種類
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VAT簡易課税率
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食品、菓子、たばこ、新聞又は子供服の小売
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4%
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食品卸売
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7.5%
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輸送又は保管(宅配便、貨物輸送、タクシーなど)
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10%
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コンピューター修理サービス
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10.5%
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管理コンサルティング
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14%
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コンピューター及びITコンサルティング又はデータ処理
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14.5%
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VAT簡易課税率は、各業種の貿易コスト及び仕入税額によって異なります。企業は「有限原価取引者(Limited Cost Trader)」の場合、VAT統一税率制度の特殊税率(16.5%)を適用します。「有限原価取引者」とは、1四半期内に税込み仕入額が税込み売上額の20%未満である事業者、又は税込み売上額の20%以上であるが、250ポンド未満である事業者です。税込み仕入額は企業の経営コストをいいますが、企業又はその従業員が消費する食品、飲料、資産、車両、車両部品、輸送事業に生じた燃料を含みせん。
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簡易課税制度を利用する要件
簡易課税制度を利用するためには、企業は次の要件を満たしなければなりません。
(1) VAT登録をする資格を有すること。
(2) 翌年度の課税売上高(税抜)の推計額が15万ポンド未満であること。(推計が不合理である場合、HMRCは要件に即日又は該当しなくなる日から企業の簡易課税を終了する権利を有する)
(3) 過去12ヶ月に簡易課税制度を利用できなくなることがないこと。
(4) その他のVAT登録済企業と関係がないこと。
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簡易課税のメリット
(1) 会計事務を簡素化します。簡易課税制度は、要件を満たす企業がVATを計算するための管理負担を軽減しました。
(2) キャッシュフローを改善します。企業は定めた税率でVATを納付するため、特に企業がもらったVATが標準税率で納付するVATよりも高い場合、キャッシュフローを改善する可能性があります。
(3) 記録の保存が不要となります。簡易課税制度では、企業は仕入税額の記録及び書類を保存する必要がなくなり、会計事務がさらに簡素化されます。
しかし、次の企業にとっては簡易課税の効果がマイナスです。
(1) 英国国外の顧客に商品を販売し、英国国外の仕入先から商品を購入する企業
(2) 仕入税額が売上税額より高く、HMRCからVAT還付を受ける可能性のある企業
(3) その他の課税方法と比べ、簡易課税の方がより多くの税金が発生する企業
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新規登録の1%軽減
簡易課税制度により、1%軽減は簡易課税を利用してから12ヶ月以内ではなく、VAT登録から12ヶ月以内の企業に適用されることになりました。VAT登録から12ヶ月後簡易課税を利用する企業は、1%軽減を適用しません。
企業は譲渡されて経営を続ける場合、譲渡する日から12ヶ月以内に1%軽減を適用します。
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簡易課税の計算例
簡易課税制度において、要件を満たす企業は定めたVAT率を売上高(税込)にかけてVATを算出しますが、仕入又はコストにかかる仕入税額の還付を受けられません。ただし、1回の購入にかかる費用は2,000ポンド以上の場合、この限りではありません。
【計算例】
課税額=税込み売上高×簡易課税率%
ステップ1:請求書単価1,000ポンド+(1+標準税率20%)=請求書合計1,200ポンド(税込み売上高という)
ステップ2:コンピュータ修理サービス事業の簡易課税率10.5%を確認
ステップ3:課税額=税込み売上高×簡易課税率=1,200ポンド×10.5%=126.00ポンド
企業はHMRCへ126ポンドの税金を納付しなければならず、当該取引に関する費用にかかる仕入税額(コンピューター修理のために購入する材料にかかるVATなど)の還付を受けられません。
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啓源のサービスと費用
VAT事務を啓源のプロ会計士に委託することによって企業のリスクを最低限に抑えられます。
番号
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サービス
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費用(ポンド)
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1
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標準税率のVAT登録
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300
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2
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VAT登録後の簡易課税選択申告
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200
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3
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簡易課税のVAT登録
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400
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4
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簡易課税の登録抹消
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300
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5
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VAT登録抹消
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300
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6
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四半期ごとのVAT申告書提出
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200から
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簡易課税率の変更
企業は経営している事業を変更した場合、変更する日から30日以内にHMRCに書面で報告し、変更後の事業に応じる簡易課税率でVAT額を計算・納付しなければなりません。1簡易課税年度に簡易課税率が2回以上変更された場合、企業は当該年度のVAT額を計算する際に、各期間が適用される簡易課税率でVAT額を計算する必要があります。
企業が期限内にVAT登録をし、正確なVAT申告書を提出し、期限内に納付するために、HMRCは一連の措置を施行しています。企業はVATの簡易課税に関する申告が間違っていたとき、HMRCからの調査、又は罰金や処分を受ける恐れがあります。