中国労務派遣の制限
労働派遣と伝統的な雇用形態の最大の違いは、労務派遣には3つの主体(即ち、労務派遣会社、派遣先会社及び労働者)が存在することです。3つの主体がありますので、労務派遣では、同時に2つの契約があります。1つは、労務派遣会社と派遣先会社が締結する労務派遣契約であり、もう1つは労務派遣会社と労働者が締結する労働契約です。従って、労務派遣では、労務派遣会社は労働力の実際の利用者ではなく、派遣労働者の雇用主です。派遣先会社は労働者との間に労使関係がありませんが、労務派遣契約に基づいて実際に労働者を使用します。これは、労働力の雇用と使用を離させてしまいます。
柔軟な雇用方法である労務派遣は、企業間で普及しており、雇用主の法的責任を回避するために悪用されるケースもあります。労務派遣を規範化するために、労働者の合法的な権益を保護するために、「中華人民共和国労働契約法」は労務派遣に対する規定を策定し、中国人的資源社会保障部も2014年に「労務派遣暫定規定」を公布して、労務派遣に対する一連の規範を策定しました。現在、中国の労務派遣に関する法規には主に以下が含まれます。
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労務派遣範囲の制限
派遣先会社は、派遣される労働者を臨時的、補助的または代替的な職位にのみ使用できます。
その中で、臨時的職位とは、存続期間が6か月を超えない職位を指します。補助的職位とは、主要な業務にサービスを提供する非主要な業務の職位を指します。代替的職位とは、派遣先会社の労働者が勉強や休暇などのために働けなくなった一定期間内に、他の労働者が代わりに担当する職位を指します。
派遣先会社は、派遣労働者を使用する補助的職位を設定したい場合に、従業員代表大会又は従業員全体の討論を経て、提案や意見を提出し、労働組合または労働者代表と対等の立場で交渉して確定し、且つ社内で公示するものとします。
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労務派遣割合の制限
派遣先会社は派遣労働者の数を厳しく管理する必要があり、派遣労働者の数が従業員総数の10%を超えてはなりません。前述の従業員総数とは、派遣先会社と労働契約を締結した人数と派遣労働者数の合計数です。
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労働契約期間の制限
労務派遣会社は派遣労働者と2年以上の固定期間労働契約を締結し、月ごとに労働報酬を支払う必要があります。派遣労働者が働いていない期間中に、労務派遣会社は、所在地の人民政府が定めた最低賃金基準に従って月ごとに報酬を支払う必要があります。
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「同一労働同一賃金」の制限
派遣労働者は、派遣先会社の労働者と同じように「同一労働同一賃金」に適用されます。派遣先会社は、「同一労働同一賃金」の原則に従い、派遣労働者と社内の同類の職位に就く労働者に対して同一の労働報酬の分配方法を実施するものとします。派遣先会社に同類の職位に就く労働者がいない場合は、派遣先会社の所在地で同一または類似の職位に就く労働者の労働報酬を参照するものとします。
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例外規定
外国企業常駐代表機構や外国金融機関駐中国代表機構などが派遣労働者を使用する場合、及び船員の雇用主が労務派遣の形式で国際遠洋船員を使用する場合、臨時的、補助的、代替的な職位及び労務派遣割合の制限を受けません。
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労務派遣規則違反の法律責任
「中華人民共和国労働契約法」第92条によると、労務派遣会社、派遣先会社が関連する労務派遣規則に違反した場合、労働行政部門は期限内に改正するように命令するものとします。期限内に改正されていない場合は、1人あたり5,000元以上10,000元以下の罰金が科せられ、労務派遣会社の労務派遣経営許可証が取り消されます。派遣先会社が派遣労働者に損害を与えた場合、労務派遣会社及び派遣先会社は連帯賠償責任を負うものとします。
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