米国の会社合併の種類
合併とは1つの会社はもう一つの会社に買収される方法の一種です。合併する際のやり方の選びは会社法以外、ビジネス方面や税務関係からも配慮しなければなりません。本稿では、別々の事業体が1つの事業体にあわさる方法を説明致します。
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吸収合併と新設合併
吸収合併とは当事者の2つの会社の中に、1つの会社はもう一つの会社に吸収されることです。たとえば、X 社が Y 社に吸収合併されることにより、X 社は消滅し、Y 社は存続します。新設合併の場合、既存の 2つの会社は合併により消滅し、その権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させます。即ち、X 社と Y 社との合併によりZ 社が設立されます。X 社と Y 社は消滅し、Z 社は存続します。
消滅する会社にとって吸収合併又は新設合併は根本的な変更です。したがって、当該変更決定はその会社の取締役会での承認を取得する上に総株主の同意を得なければなりません。 しかし、デラウェア州など一部の州では、当該変更決定による定款の変更がなくて且つ組織変更されても追加発行された株式の数が20%以内であれば、存続会社の株主は投票権利がありません。
存続会社が消滅会社の権利義務を承継することは。この原則は吸収合併又は新設合併の特徴です。これは債権者の権利を配慮したわけです。合併により消滅した会社に対して債権を有すれば、上記の吸収合併又は新設合併の特徴を適用し存続会社に対しても債権の請求を主張することができます。
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三角合併
「買収者」の会社 ( A 社) が他の会社 (対象会社または T 社と呼ばれる) を買収したいと考えているとします。T 社が A 社に吸収合併されます。後継者責任の原則に基づきA 社は T 社の義務を承継することになります。
その代わりに、上記の当事者間では三角合併を行うことができます。 A社は完全子会社を設立します。A社は現金又はA社の株式で子会社の資本を増やし、子会社の全部の株式を取得します。その後、T社は子会社に合併されます。完全子会社はT社の全ての株式を取得します。その結果、
(1) A社がT社の全ての株式を取得する(A社の子会社がT社の全ての株式を所有することにより)
(2) T 社の株主は、A 社の株式と現金のどちらを取得します (この場合、T社の株主はどの会社の株式を保有していません)、そして (最も重要なのは(3)の内容です)
(3) A 社は、T 社の債務を承継しません(完全子会社は合併存続会社として責任を負います)。
上記のような取引では、A 社と T 社は株式公開の上場企業であり、子会社を設立する目的は買収を促進するためです。なので、この方法では当事者が上場企業の株主の投票による費用が不要となりコストはA 社と T 社間の直接合併よりかなり低いです。さらに重要なことはA 社が T 社の債務を承継しない点です。
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逆三角合併
逆三角合併の場合、 A社は完全子会社(サブ社)を設立しますが、その後完全子会社はT社に合併されます。完全子会社とT社との合併により、T社の株主は完全子会社の株式を取得し、完全子会社は自分の株式を現金に両替し又はこれは現金A社の株式と交換します。
三角合併と逆三角合併はいずれも、両社間で直接譲渡や譲渡を行うことなく、T 社が A 社の完全子会社となる三者間取引を伴うことはキーポイントです。T 社の株主は、 A 社の子会社と合併しても、A 社の現金または株式を受け取ります。
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キャッシュアウト合併
キャッシュアウト合併とは、対象会社の株主が現金と引き換えにその株式を手放すことであり、株主の持分を凍結または奪取する結果になったので、フリーズアウトまたはスクイーズアウト合併とも呼ばれます。株式保有者は合併取引の成立によってその資格を失います。
X 社が Y 社に合併されることにより、X 社の大株主は Y 社の株式を取得しその少数株主は現金またはその他の財産をゲットするのは典型的なキャッシュアウト合併です。キャッシュアウト合併の実行により、目障りだと認識された少数株主が強制的に排除されたり、「非公開化」取引(上場企業でなくなること)の一環として公開所有権が消滅されたりします。少数株主の株式を現金化するには正当な理由がありますが、強制的な面もあります。
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その他の合併
多くの合併は親会社と子会社の間で行われます。親会社が存続会社となる場合は上り合併となり、一方、子会社が存続する場合は下り合併となる。下り合併は上場会社の法人住所の変更の為に利用できます。新しい州に完全所有子会社を設立し、その後その子会社に合併されるというやり方です。親会社の株式と財務上の利益は、子会社の株式と財務構造に反映されます。合併によりA 州で設立された旧上場企業の各株主および債権者は、そのまま B 州で設立された会社の株主および債権者になります。
多くの州では、親会社が子会社の株式の大半(通常は 90 パーセント以上)を保有する場合の上り合併又は下り合併に対して、簡易合併と呼ばれる特殊略式合併手続きが行われています。簡易合併では、どちらの会社の株主投票も必要とせずに、親会社が子会社との相互合併が認められます。更に、この場合、子会社の取締役会の承認も要りません。
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株式交換
一部の州では模範会社法 (2016) の先例に従って、株式交換が根本的な組織変更であると認められています。これは、前半部分で説明した逆三角合併の代替です。株式交換という名称ですが、名称と違って株式交換を行うことではなく、強制的に株式の売却を強制させる手段です。株式交換により、対象会社 (T 社) の株主が買収会社 (A 社) に株式の売却を行わざるを得ないです。その結果、A 社は T 社の全ての株式を取得し、T 社の株主は現金またはその他の財産に両替します。
株式交換は対象会社のみにとって根本的な組織変更となるので、標準的な手順に従って承認を得る必要があります。承認を得た場合、すべての株主は(株式交換取引に反対した株主も含めて)株式交換の契約条件に則って株式を放棄しなければなりません。対象会社の反対株主は、評価権を主張することができます。しかし、株式交換では買収会社側には根本的な組織変更がないため、買収会社の株主はこの取引について投票が不要で、評価権を主張することもできません。
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合併における信託問題
他の根本的な組織変更と同様、会社合併は少数株主を抑圧するために悪用されることがあります。
たとえば、X、Y、ZはXYZ会社の株主であり、それぞれが株式の 3 分の 1 を保有しています。意見の相違が発生し、X と Y は、XYZ 会社を2人が所有しているXY 会社への合併に働きかけました。 X、Y、Z は合併条件に基づいて現金を取得することになりました。その結果、X とY は、旧XYZ 会社を合併したXY 会社を経営することになりました。一方、Z は運が悪くて株式の持分を失い現金しかゲットできませんでした。
しかし、この場合、Z には法定の評価権があり、その権利に基づき、 Z は会社に対し、公正価値で自分の持分を買収してもらうことが可能です。その価格はキャッシュアウト合併価格よりも高いかもしれません。他の州では、合併取引に詐欺や脅迫がある場合、Z は訴訟を起こすことができます。
続きを読む:
米国における会社の全資産の処分について
参照:
[1] Richard D. Freer. The law of corporations in a nutshell. West Pub. Co, 2020.