第1節 個人所得税の基本規定 |
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課税の原則 シンガポールの税制は属地主義を採用しています。シンガポールの所得税法に基づき、個人がシンガポールで発生した又はシンガポールから得た、またはシンガポールで受け取った・受け取ったとみなされる収入は、シンガポールの所得に該当し、シンガポールで確定申告を行う必要があります。逆に言えば、シンガポール国外で得た、または受け取った・受け取ったとみなされる収入は、シンガポールで課税の対象になりません。 上記の原則により、シンガポール国内でサービスを提供することにより得た収入は、シンガポール源泉所得となります。即ち個人がシンガポール居住者であるかどうかにかかわらず、シンガポール国内または海外で支払われる所得であるかどうかにかかわらず、シンガポールでサービスを提供する期間で得た所得に対する確定申告・納税を行う必要があります。一方、個人が海外で得た所得はシンガポールでの課税対象になりませんが、国内のパートナーシップ企業を通じて獲得した取得は課税免除に該当しなく、課税の対象になります。 |
2、 |
賦課年度 シンガポールの賦課年度は毎年1月1日から12月31日までです。納税者は賦課年度中に得た所得に対して、賦課年度終了後翌年3月1日から4月18日までの間に確定申告を行わなければなりません。 |
3、 |
賦課の範囲 シンガポールの所得税法により、以下の個人所得に対して所得税を納付する必要があります。 (1) 給与所得 (2) 事業所得、コミッション、及びフリーランスの報酬 (3) 投資所得(不動産投資の家賃収入など) (4) その他所得(年金、特許使用料、宝くじの当選金又は投資信託の収入など) 上述に述べられている個人所得の形式は現金、実物、有価証券、仮想通貨、株式及びその他の経済的な利益を含みます。現物給与とは被雇用者がシンガポールにおいて雇用主から受けた収益または利益です。シンガポールの所得税法に基づき、特定の現物給与は課税対象に該当します。通常、現物給与は相応する特別な減免規定がありますので、比較的低い所得税率が適用されます(例えば、雇用主が提供する車両及び住宅など)。 |
4、 |
申告義務 前賦課年度に課税所得を得た納税義務者は、指定された期間内に内国歳入庁に対して確定申告を行う必要があります。当該年度の収入は20,000シンガポールドル(以下、Sドル)を超えていないことにより納税不要でも、申告が義務付けられます。内国歳入庁から申告不要通知を受け取った場合は別です。 |
第2節 シンガポール税務上の居住者 |
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税務居住者の判定 ある特定の賦課年度において、以下の条件のいずれかに該当する者はシンガポールの税務居住者と判定されます。 (1) シンガポールに居住するシンガポール市民(SC)と永住者(SPR) (2) 年間183日以上シンガポールに居住する外国人(会社の取締役を除く) (3) 連続した2年度内に183日以上シンガポールに居住し、かつ当該2年度をまたぐ関連雇用契約書を持つ外国人 (4) シンガポールに継続して3年間居住する外国人 表1: 居住者判定の要件と税務上の影響
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個人所得税の計算方法 シンガポール居住者である個人納税者は、その課税所得に適用される税率をかけて所得税額を計算します。課税所得の金額は、課税される純所得です。納税者は下記の公式に基づいて所得税額を算出することができます。
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所得税率 税務上の居住者の所得税額は前年度の所得から所得控除を差し引いて累進課税方式で計算されます。適用される所得税の税率は2%から22%までです。 2019賦課年度には、個人所得税の50%のリベート(上限額が200Sドル)が与えられました。 表2: シンガポール居住者の個人所得税の累進税率表(2017年及びそれ以降の賦課年度が適用される)
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免除額 シンガポールにおける税務上の居住者に対して、個人所得税の免除額が毎年20,000Sドルです。年間課税所得が20,000Sドル以下の場合には、税率はゼロとなります。納税者は年間課税所得の20,000Sドルを超えた分だけに対して、適用される税率をかけて課税額を計算する必要があります。 |
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タックスリベート シンガポールにおける税務上の居住者は、子供の養育費、職業訓練費用、保険料及び積立金の納付に対して個人所得税のリベートを享受できます。納税者は確定申告を行う時に個人の状況によって個人所得税のリベートを申請することができます。 表3: 個人所得税のリベート額(2019年及びそれ以降の賦課年度が適用される)
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第3節 シンガポール税務上の非居住者 |
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非居住者の判定 1賦課年度以内にシンガポールに滞在・就労する日数が183日未満の外国人は、税務上の非居住者と判定されます。その後の特定の賦課年度に、当該外国人は税務上の居住者の判定要件を満たしましたら、税務上の居住者として納税する必要があります。 税務上の非居住者は1暦年のシンガポール就労日数が60日未満の場合、取得した給与所得については免税となります。但し、当該課税免除規定は会社の取締役、芸能関係者及びプロフェッショナル(専門家、コンサルタントなどを含む)に適用されません。取締役の報酬及びその他の収入は22%の税率が適用され、且つタックスリベートを享受できません。 税務上の非居住者は1暦年のシンガポール滞在日数が61~182日の場合、そのシンガポールで得た所得が課税対象となり、且つタックスリベートを享受できません。その給与所得は15%の税率、または税務上居住者の累計税率のいずれか高い方に準じます。取締役の報酬及びその他の収入は22%の税率が適用されます。 表5: 外国人が税務上の非居住者と判定される税務影響
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税務上の非居住者から居住者となる場合 外国人は税務上の非居住者と判定されると、その後の特定の賦課年度において、当該外国人が税務上の居住者の判定要件を満たせば、税務上の居住者として納税する必要があります。税務上の居住者の判定基準は以下のとおりです。 (1)年間183日以上シンガポールに居住する(会社の取締役を除く) (2)連続した2年度内に183日以上シンガポールに居住し、かつ当該2年度をまたぐ関連雇用契約書を持つ (3)シンガポールに継続して3年間居住する 実際の操作において納税者は初めて確定申告を行う時に、当該外国人は前課税年度でシンガポールで滞在・就労する日数が183日未満の場合、税務上の非居住者とみなされて確定申告を行います。それ以降の年度に滞在日数などが税務上居住者の判定基準を満たせばIRAS(シンガポールの税務署)に対して税務上居住者の身分として納税することを申請しなければなりません。納税者は、過年度の課税額についてIRASに訴え、過去にさかのぼって更正の請求を行い、払い過ぎた税金を取り戻すことができます。 |
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所得税の税率 表6: シンガポール税務上の非居住者の個人所得税税率表
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第4節 税制優遇措置 |
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シンガポール国外源泉所得に対する免税措置 シンガポールの内国歳入庁(IRAS)のガイドラインに基づき、2004年1月1日より、シンガポールで就労する従業員は海外で得た所得が課税対象とならず、個人所得税を納付する必要がありません。海外から受け取った収入は免税となります。但し、以下の場合に国外源泉所得は課税対象となります。 (1)給与所得が海外勤務で得て、且つ当該海外勤務がシンガポールにおける仕事にかかわる。即ち、海外勤務はシンガポールにおける仕事の一部である。 (2)国外源泉所得はシンガポールにおける共同事業を通じて得た収入である。 (3)納税者がシンガポール政府の代表として海外で働く。 |
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非通常居住者計画(NORスキーム) シンガポール政府は2002年にNORスキーム(Not Ordinarily Resident Scheme)を打ち出しました。当該スキームとは、優秀な人材をシンガポールに誘致することを目的としています。NORスキームの要件を満たしていればそのシンガポールに滞在した日数でその課税所得金額を算出できます。なお、該当者は勤務前所得(pre-assignment income)及び年金積立などの優遇政策も享受できます。 下記の条件を満たす外国人は5年間有効の「非通常の居住者」身分を取得できます。 (1)当該資格を申告する予定である賦課年度に税務上の居住者と認定されなければならない。 (2)当該資格を申告する予定である賦課年度の過去3賦課年度には税務上の居住者と認定されなかった。 (3)シンガポールにおける仕事の都合で暦年で90営業日以上海外で滞在する。 (4)個人の給与所得が最低160,000Sドルである。 NORスキームに基づく居住者である従業員は連続する5賦課年度に以下の優遇措置を享受できます。 (1)時間によって給与所得を計算する (2)任意加入の海外の退職年金基金または社会保障計画に対する雇用主拠出金は免税となり(特定の場合を除く)、免税限度額が中央積立金(CPF)に規定される「普通」と「追加」の給与の最高納付額までです。 同時に、時間割付の優遇措置は現金補助及び実物支給に適用されます(取締役の報酬及び雇用主が従業員のために納付・負担するシンガポールにおける税金を除く)。 シンガポール政府はその2019年度財政予算案に、現在のNORスキームを停止する決定を発表しました。NORスキームにおける最後の「非通常の居住者」身分が2020年から2024年まで有効です。現在有効な「非通常の居住者」身分はその元の期限まで有効です。 |
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地域代表計画 地域代表計画は、シンガポール国外の会社によって雇用され、その給与が国外の会社によって支払われ、且つその職務責任がシンガポール以外の地区をカバーする者に対する課税減免の計画です。当該者の雇用契約書は複数の国家(地区)をカバーしなければなりません。 地域代表はそのシンガポールでの滞在時間によって課税所得額を計算する必要があります。従って、当該者は必ずその旅行日程表を保存しなければなりません。当該日程表は、毎回シンガポールの入国・出国日付及び目的地などの情報を含んでいます。シンガポールでの滞在日数を計算する時に、1日未満であっても1日で計算します。 地域代表はシンガポールの税務上の居住者とみなされる場合、その課税所得額が累進税率で計算され、且つ納税の各減免措置を享受できます。さもなければ、税務上の非居住者の課税規則が適用されます。 |
第5節 個人所得税の申告と納付 |
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個人所得税の申告 納税者は毎年3月1日から4月18日までの期間で、シンガポール政府のオンラインシステムを通じて確定申告書を提出することができます。書面で提出する場合、毎年4月15日までに提出しなければなりません。
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税金の納付 納税者は賦課決定通知書の納税額に同意する場合、賦課決定通知書の発行日から30日以内に税金を納付する必要があります。IRASに異議申立てを行ったとしても、IRASの承認がなければ、指定の期限内に税金を納付しなければなりません。 シンガポールの内国歳入庁は納税者に対して多種多様な支払い方法を提供しております。その中で、内国歳入庁が一番おすすめするのはGIRO (銀行口座自動引落)です。GIROを通じて個人の銀行口座から税金が自動で引き落とされ、操作が早くて便利であり、分割納付することも可能です。GIROを初めて利用する納税者は、Master GIRO Application Formの記入・提出が必要です。 |
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